部下を失敗から成長させることができるリーダーの「器」はこうして形成される
「部下が取り返しのつかない失敗をした時、社長はどう対応するのか?」
先日、金沢で行った出版記念イベントで、ある参加者からこんな質問がありました。
任せることへの恐れや不安が表れた質問だと思います。
失敗の対応にリーダーの器が出ますので、まさに指示ゼロリーダーが試され時だと思います。
実際には、社員さんの立場で「取り返しのつかない失敗」というのは、まずありません。
むしろ、リーダーが自分の思い通りにいかなかった時に、勝手に「取り返しのつかない」と思い込んでいることが多いのだと思います。
出版記念イベントの特別ゲストは、書籍の事例で登場した株式会社ザカモア(西村拓朗社長)の皆さんです。
イベントでは、同社が指示ゼロになっていく過程を紹介していただきました。
その中で、ある社員さんから冒頭の問いについて考えさせられるエピソードが出ました。
ある時、数名の社員さんで考えたプロジェクトが大きな損失を出してしまいました。
損失金額が大きかったので、社員さんたちは、怒られる覚悟で西村社長に報告をしました。
すると、西村社長は落ち着いた様子でこう言いました。
「どうしてそんなことになったの?」
後に分かったことですが、西村社長は、自分の報酬を減らし損失を補填したそうです。
任せた以上、何が起きても社長の責任だと考えているからです。
出版記念イベントで、このエピソードを発表した社員さんが、「そんなことが起きたのは、みんなでやっているうちに、みんなが雰囲気に流されてしまったからですが」とおっしゃっていました。
おそらく、当時、西村社長から「どうしてそんなことになったの?」と聞かれた時は分からなかったことだと思います。
人は自らの意思でのみ変わります。
西村社長は、ぐっと堪えて、問いを投げることで社員さんに自分たちで考えてもったのだと思います。
器がデカいですね〜
僕なら嫌味の1つでも言いそうですもん。
こうした対応ができる要因の1つは、「経営の目的設定」にあると僕は感じました。
書籍執筆の際に同社にインタビューを行った時、西村社長は経営の目的をこう明言しています。
「もともと金儲けがしたくて社長になったわけではないんです。〝愉しい会社〟をつくりたかったんです。メンバー1人1人が自分の個性を発揮し、自由でありながら、互いの能力の凸凹を補い合える、感動あふれるチームをつくりたかった。愉しくないのに業績が上がっても、僕には意味がないんです」
もし、西村社長が儲けを目的にしていたら、社員さんの失敗を「目的を阻害された」と解釈し、社員さんを責めたでしょう。
社員さんが成長しても、目的が達成されるまで喜べません。
もし喜べたとしても、それは社員さんの成長に対してではなく、儲けに近づいていることに対してです。
それでは人は育ちません。
同社は、今、完全な指示ゼロ状態になっており、社長の能力を超えたパフォーマンスを組織が発揮しています。
それが実って、業績を伸ばし、大企業を超える賞与を支給するに至りました。
でもそれは「結果」であって「目的」ではないのです。
僕は、結局のところ、指示ゼロ経営の成否を分けるのは「目的」だと考えています。
西村社長の言葉を胸に刻みたいと思います。
何を目的に経営されますでしょうか?
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。
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