中小企業には「今ある食材(人材)で最高の料理(経営)をする」という発想が必要

自分は一体、どんな職業に就けば自分らしく生きられるのだろうか?
いわゆる「天職」が、今も昔も問い続けられる理由は、人間の根源的な欲求だからだと思います。
自分らしく生きたいという魂レベルの欲求です。

僕は、「どんな職業に就けば」自分らしく生きられるか?と問うと、かえって自分を束縛してしまうような気がしています。
職業という具体的なものにフォーカスすると自由が制限されてしまうのです。

それよりも、「自分を活かした働き方はどんなものだろうか?」と問うた方が可能性が広がると思います。

僕の友人に、子どもの頃から絵が好きで、絵で食っていくことを夢見ていた女性がいます。
芸術家になりたかったのです。
彼女にとって、絵を描くことは「生きること」でした。
しかし、夢は叶わず地元の小売店の事務員として働いています。それは、彼女にとっては「食うため」の選択です。
趣味で絵を描くという手もありますが、彼女は生業にしたかったのです。

小売店の入社当初、彼女はくすぶり続け、生きていませんでした。

そんな、ある日、上司から折込チラシを作る手伝いを頼まれます。
上司が作るチラシは可愛げがなく、若い感性を取り入れたかったのです。
彼女は当然のように絵で表現しますが、上司は、自分のイメージをすらすらと絵にする様子を見て大喜び。
すぐに、コンセプトは上司が作り、ビジュアルデザインは彼女がやるという役割分担が自然とできました。
チラシは非常にセールス反応が良く、上司からとても感謝されました。

彼女は、絵を描くことで自分が生きているという喜びを得たのですが、それ以上に、「自分が描いた絵が活かされている」という喜びを知ったのです。

生きることと食うことが統合した世界が立ち現れたのです。

芸術家とは形は違いますが、作品で人を幸せにするという意味では、本質は同じだと思います。

僕は、この話を美談ではなく、経営の実務として捉えて欲しいと考えています。

よく、「戦略ありきで、そのために必要な人材を採用する」と言います。料理で例えると、夕飯はカレーと決めて、必要な食材を揃えるという発想です。
最近、よく言われる「ジョブ型雇用」です。
しかし、中小企業では、そんなに都合が良い人は来てくれません。
自社の思いやビジョンに共感してくれる、ヤル気ある人であれば十分です。
(そういう人と出会うのも大変ですが…関心がある方は採用術セミナーをチェックして下さい)

カレーの例えで言えば、冷蔵庫を開けてみて、今ある食材でオリジナルカレーを作るという発想が求められます。

そのカレーは、大企業が作るような万人受けするものではないと思いますが、一部の人には強く愛されるカレーです。

このような視点を持って社内を見渡してみて下さい。
宝の山だと思います。

リーダーは、宝を見ながら、「こんなことができるかもしれない」と大まかなビジョンをイメージし、メンバーに伝えます。
メンバーと一緒にビジョンをより鮮明にしていくと、自分が生きる領域がイメージできるようになります。自分でイメージできなくても、仲間が指摘してくれるかもしれません。

それができれば、生きることと食うことが統合した、幸せで生命力あふれる企業になると思います。

口で言うほど簡単ではありませんが、指示ゼロ経営の理想だと思います。
目指す価値はあると思いますよ。

というわけで今日も素敵な1日をお過ごしください。

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