貸借対照表に乗らない「観えない資産」を大切にする成熟経営
ビッグモーターの記者会見は、悪いお手本のようでした。
前社長が「不正を働いた社員を提訴する」と言ったのに対し、記者から「まるで自分が被害者のようですね」と突っ込んだのが印象に残っています。
あのひとことが頭にきたという人は多いんじゃないかな?
無責任を絵に描いたようなセリフですが、僕は、実は前社長は、何でこんな事が起きたのか分かっていないんじゃないかと思ったのです。
同社の売上高は、2017年度が1738億円だったのに対し、直近は5200億円…わずか5年で3倍近くになっています。
中古車市場が活性化しているとはいえ、自然な成長ではなく無理をしたことが伺えます。
それを裏付ける証言もあります。
A3サイズの紙に書かれた『数字は人格』という「格言」が送られてきて、額に入れて飾るように指示があったと言います。
きっと、数字を最大化することが正義だと信じていて、前社長や経営陣はそれに向かってひた走ったのだと思います。
「不正をしても構わない」とは思っていなかったと思います。
前社長はすごく根性と商才がある人で、自分であれば不正を働かなくても目標を達成することができただろうし、仕事を楽しめるのだと思います。
しかし、組織はそうではありません。
経済学に「短期的な利益を追求すると長期では損をする」という研究があるそうです。
このことは学問を持ち出すまでもなく、商人なら体験的に分かっていることです。
例えば、無理な売り込みをして顧客の信頼を失ったり、在庫を減らしてお店がスカスカで魅力がないといった不条理を起こす企業があります。
その延長に不正があります。
当然ながら、そういう仕事は社員が嫌がります。
逆に、お客様や社会に喜ばれる仕事は、社員は率先してやります。
メンバーみんなが望むことなので、自然とチームワークが良くなります。
愉しいから豊かなアイデアが出るし継続もします。
継続すると顧客との間に関係性ができます。
関係性は貸借対照表に乗りませんが、重要な資産です。
これが繁栄の理だと考えるのです。
社員は、日々、お客様に喜ばれる悦びに満たされます。
もちろん楽ではありませんが、こういう働き方をする人は、みんな「楽ではないが愉しい」と言います。
僕は、人生の中にこのような時間があることが何よりも貴重なことだと考えています。
「何よりも」ということは数字的な成長よりも大切だということです。
大切なことを大切にし、実践した結果として数値的な富が得られるのです。
そういう意味では、『数字は人格』は正しいのかも?笑
オレも額に入れて飾ろうかな?
ビッグモーターの一件は、企業風土の大切さと怖さを私たちに教えてくれます。
経営の目的を考える機会にしてみてはいかがでしょうか。
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。
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