「あの社員には辞めてもらいたい」という社員が出た時に、メンバー全員が心得るべきこと

「正直に言うと、あの社員には辞めてもらいたい」

仕事ができない。ミスが多い。人間関係を乱す…社内に、そういう人がいる、あるいは、過去にいたという経験は、どんな企業にもあると思います。

今はいなくても、将来、そういう人が出る可能性は否定できません。

そんな時に、どう対応すべきでしょうか？
今日の記事では、このナーバスな問題について考えたいと思います。

全員が得をする「１人も見捨てない」という考え方

指示ゼロ経営には、「１人も見捨てない」という概念があります。
SDGs的な考え方ですが、僕は、「辞めてもらいたい社員がいる問題」を解決する基本概念だと考えています。

この概念は道徳の話ではなく、究極の損得勘定です。

人は、それぞれ得手も不得手もあり、１人で事を成し遂げることはできません。
だから、人類は、能力や性格などの凸凹を補い合い合うチームワークを発明しました。

生存戦略は弱肉強食ではなく、適者生存です。
人間は単体では不完全です。
そこで、組織の協働で環境に適応し、幾多の試練を乗り越えてきました。

ダメな人を切り捨てるという選択肢が上位に来る組織では、最適化は難しいと思います。
その理由は、１人を見捨てる組織は、２人目、３人目の犠牲者を出すからです。
４人目、５人目…６人目に見捨てられるのは自分かもしれません。
心理的安全性は破壊され、チームワークは機能不全に陥ります。

そうなると、自分が見捨てられないための対策として、人身御供を差し出すという方法を取る可能性があります。

「いつもダメなアイツ」がいる組織では、もしかしたら、メンバーの潜在意識下でこのような作用が働いているかもしれません。

「１人も見捨てない」を徹底して問題を解決した組織

ある会社（Ａ社）は、障がい者を雇用している会社（Ｂ社）の１人も見捨てないチームワークを目の当たりにして、このことに気付きました。

Ｂ社は、地域密着型の商いをされている、創業１２０年を超える老舗企業です。
以前から積極的に障がいのある方を雇用してきました。

障がいのある方を雇用するようになってから風土が良くなったと言います。
車イスを使っている社員さんがいますが、その方が動けず困っていたら、「当然」周りが助けます。
僕が同社にお邪魔した時には、ちょうど終業の時間で、車イスの社員さんの家族が迎えに来ていました。
仲間がみんなで力を合わせ、家族の車に乗せている光景が印象に残っています。

目に見える、身体的な障がいだけではありません。
知的なものから精神的なもの、発達障がいなど、様々な障がいを持った方が働いています。
精神的に安定せず、周りと上手にコミュニケーションが取れない方もいます。
障がいへの理解がなければ、迷惑なヤツで片付けられてしまう可能性があります。

そんな状況で、各自の長短をみんなが理解し、「１人も見捨てない」協働が実践されていました。

障がいのない社員さんも例外ではありません。
障がいと認定されないだけで、仕事をする上での弱点は誰しも持っています。凸凹を補い合うことが「当然」の文化として根付いており、最高のチームワークが実現しています。

Ｂ社の様子を見たＡ社の人たちは、まったく違うパラダイムでチームが機能していることに衝撃を受けたと言います。
その後、徐々にではあるが、「１人も見捨てない」チームワークづくりを、みんなの力で実現しようとがんばっています。

誰よりも救われたのは社長だと思います。
これまでは、「ダメなアイツ」に関するメンバーの不満を、社長１人が抱え込んできました。
それが、今では「１人１人の課題」として受け止めてくれるようになったのです。

もちろん、この考え方、方法は万能ではありません。
周りのメンバーがカバーできないほどの問題を抱えたケースもあります。

しかし、１人も見捨てない事を、決して諦めない決意なしに、解決することはないと思います。

決意ができれば、１人１人の長短をカバーするアイデアはたくさん出ると思います。
要は、肚を括るかどうかだと思うのです。