人材育成の達人は「自分の力で相手を育てる」という意識を持っていない
優秀な人材を育てるリーダー、教師、講師には謙虚な人が多いと感じています。
人材が育ったのは、自分の手柄ではなく、社員さんの力によるものだと言う人が多いのです。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉がピッタリだと思いました。
しかし、僕は、そんなリーダーと長くお付き合いをしてきて、謙虚というわけではないことが分かりました。
事実を事実として捉えているだけなのです。
自分の力で育てているのではなく、本来、人間に備わっている成長エネルギーが発揮されるようにサポートをしているのです。(そう捉えられる人のことを謙虚な人、と言うのですがね)
以前に、講演会で、心療内科の医師が同じようなことを言っていました。
「病気を治すのは医者や薬ではなく、患者だ」という趣旨の言葉でした。
心療内科には、心が病んだ人が次々と来て、「先生、もうダメだ。死にたい」と絶望の言葉を吐くそうです。
それを聞いていると、医者の方が心を病んでしまうと言います。
「もう、これ以上医者を続けられない」というところまで追い詰められたある日、患者が吐く言葉が違って聞こえたそうです。
口から出る言葉では、「死にたい」と言っているが、心の叫びは「生きたい」と言っているのだと。
本当に死にたいと思っている人は心療内科に来ません。
患者から発せられる生命力を感じた時に、自分が治すわけじゃないと気付いたと言います。
そう気付いた時に、ふっと心が軽くなったと言っていました。
僕は、この話を聞いた時に、非常に衝撃を受け、その後の社員教育が根本から変わりました。
手法は何1つ変わっていませんが、人間に対する見方が変わっただけで、これまでよりも人が良く育つようになりました。
とても不思議な体験です。
講師業、コンサルタントは最も注意が必要です。
「自分の指導でこんなにも良くなった」と強調する人が多くいますが、良くしたのは本人たちです。
この話を農家の方に話したら、「そんなの当たり前じゃん。」と言われました。
作物を相手にしている農家には当然の感覚だそうです。
人には生来的に成長意欲と自律性が備わっています。
目には見えない、それらを観る目がリーダー、親、講師、教師には求められると思うのです。
というわけで今日も素敵な1日をお過ごしください!