「無い」を見ると余計に足りなくなる。「有る」を見ると十分に手に入る

人は、足りないものを埋めようとすると大切なことを見失い、結局、手にしたいものが手に入らない事が多いと思います。

例えば、僕は営業の世界でそれを嫌というほど見てきました。
最近は減ったと思いますが、個人別の営業成績をグラフにして貼り出すのってあるでしょ?
僕もそんな環境で働いた経験がありますが、あれを見ると、どこに目が行くでしょうか?

当然、「足りない部分」…未達の部分に目が行くはずです。

足りない部分を埋めようとして、乱暴な営業をして信頼を失う…そんな場面を嫌というほど見てきました。

そんな僕を戒めた言葉があります。
確かではありませんが道場六三郎さんの言葉だそうです。
ある日、道場さんが経営コンサルタントと食事に行ったそうですが、その店は1組しかお客様がいない寂しいお店でした。
そこで道場さんはコンサルタントに聞きます。「君ならどうする?」と。
コンサルタントは頭をフル回転させ戦略を練りました。

「お店の強み」「看板メニューの設定」「対象顧客の設定」「プロモーション法」「他社との優位性」「価格設定」

経営の基本をおさえた「教科書通りの」戦略でした。

それに対し、道場さんはこう言ったそうです。

「君は空席を見るんだね。僕なら、来てくれているあの1組のお客様にうんと喜んでいただけるように尽くすよ。家に帰った時に『今日、すごく良いレストランに行ったんだ。今度、家族で行こう』と言ってもらえるように」

僕はすごく感動したと同時に、とても難しいことだと思ったのです。

「空席を埋めるために」今いるお客様に尽くす、というのはやっぱり空席を見ているから、それでは最高の仕事ができないと思うからです。

空席を忘れ、今いるお客様に尽くすことを心から愉しんだ時に、結果的に空席が埋まるのだと。

禅問答のようですね。

アスリートが「どうやったらフロー(ゾーン)に入れるだろうか?」と考えた瞬間にフローから遠ざかるのと同じですね。

こういうものは「ある精神状態で」夢中になっていたら、気づけば手に入っていたというものだと思います。

僕の師匠である、小阪裕司先生は、それを「ワクワクだよ」と教えてくれました。

営業成績の足りない部分を意識している時は「イライラ」「ハラハラ」
レストランの空席を埋めようと画策している時は「ギラギラ」

対し、今、この瞬間、目の前の人に喜んで欲しいという思いで、その相手と一緒に愉しむことでのみ「ワクワク」の精神状態に入れるのだと思います。

さらに、仲間と力を合わせてお客様の喜びを創造することに夢中になれば、また一入(ひとしお)だと思います。

口でいうほど簡単じゃありませんが「有る」を見て充実させる人生を生きたいと思うのです。

それでは今日も素敵な1日をお過ごし下さい。

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