経営には「不完全、まだ未解決」の要素が必要である
経営の技術とは、突き詰めると、どれだけ効率よく課題を解決するかということに行き着くと思います。
費用効果、時間効果…早い安い上手いの吉野家のようなもんね。
でも、それを追求すれば企業は良くなるかと言えばそうじゃないと思う。
情報学の博士である僕の師匠に聞いた話ですが、物事は短期利益を追求すると長期で損をすることが科学的に分かっているそうです。
企業には「まだ未解決」「不完全」…そんな長期要素が必要だと思うのです。
例えば、その代表は経営理念です。
永遠の課題であり到達しないのです。
幸福の追求、生き方の追求、社会への貢献、こうしたものに完成形はないよね。
例えば、ある会社では「仕事を通じ自己実現を」という理念を持っています。
自己実現とは、自分がこの世に存在する理由、役割ですが、これはなかなか分かりません。
「今は」そう思っていることでも、この先に変わる可能性もあります。
もしかしたら、あの世に旅立つ時に「ああ、自分の役割はこれだったんだ」と初めて分かるものなのかもしれません。
少々、不思議な話をします。
誰もが知っている大手食品メーカーはその昔、健康サプリメントを開発しましたが一切販売は行わず30万人以上に20年以上にわたり無償配布をしています。
僕が関係者に直接聞いた話ですが、その理由は「儲からない部分をつくった方が良いから」だそうです。
あえて不完全にしているということです。
ものの例えになりますが、先日「ブラインドウォーク」を体験し、そこで不完全の大切さに気づきました。
裸足になり目を閉じたままゆっくりと、足裏の感触を味わいながら歩くのですが、歩くという行為がこんなにも不安定だと初めて気づいたのです。
(やってみると分かりますよ!)
しかし、同時に気づいたのです。
「不安定だから前に進む」と。
僕は数多くの企業を見てきて、組織がおかしくなる典型は「大切なものを見失う」ということを知りました。
自社の存在意義を忘れ、「目先の利益追求を繰り返す集団」になり下げってしまうとおかしくなるのです。
ホワイト企業大賞でご一緒している、僕が尊敬してやまないネッツトヨタ南国の横田 英毅さんは「大切なことは、いちばん大切なことを大切にすること」とおっしゃいます。
最初は禅問答のように聞こえたのですが、横田さんのお話を聞くにつれ、それが真理であると確信を持つようになりました。
永遠に到達しない、解決しない…大きなテーマを忘れずに持ち続けることが大切だと思うのです。