「その人」の姿が鮮明になると、あなたの組織は動き出す

メディアの調査によると、国民の半数ほどが五輪開催に反対しています。
この状況下では当然のことと思いますが、僕が関心を持っているのは、僕の周りの反対派の多くのもう1つの考え方です。

それは、「そうは言っても、頑張ってきた選手の事を思うと複雑な気持ちになる」というものです。
僕もすごく共感します。
しかも、テレビなどで選手が頑張るシーン、特に病気を克服した池江璃花子選手の姿を見たときには本当に複雑な思いでした。

「その人のことを思うと」…これが今日の記事のキーワードです。
経営が上手な人は「その人」の鮮明なイメージを持っていて、それを仲間と共有しています。

例えば、僕が住む街の中学校には絆の強い同窓会組織があります。
各町内会から役員が選出され、2ヶ月に1回、会議をしています。
さらに、OB、OGに関わりなく学区内に住んでいる人に寄付金を募っています。
しかも、町内会の役員が1軒1軒集金に行くのです。

すごいでしょ?

で、毎年、新役員になると問題が起きるのです。

「集金に行きたくないんです。きっとすごく嫌な顔をされると思う」「塩をまかれる勢いで追い出される」

中には「なんでウチらが集金しなきゃいけないんだ」と抗議する人もいます。

しかし、ここ数年は非常に上手くいっているのです。

「その人」のことを思うから。

その人とは、中学生です。
集めた寄付金のおかげで部活の横断幕が買えたり、子どもたちが読みたい本が図書館に置かれたり、そんな子どもたちの喜ぶリアルを伝えているのです。

最初はつり上がった目をしていた役員も、その話を聞くと、やがてほんわかした表情になり集金に合意してくれるのです。

こんなケースもあります。

僕が経営してきた会社(新聞店)で新聞の配り間違いによるクレームが時々あります。
ある日、強烈なクレームをいただきました。
受けたのは女性事務員さんです。

「新聞代、返せ」「謝るならお前が明日から配れ」「お前が配るのかどうか返事をしろ」

電話をとった事務員はショックで、その日、仕事ができませんでした。
そして、辛い気持ちを配達現場の主任に伝えました。

主任は、その事を配達員全員に文書で伝えました。
「その事」とはお客様のことではありません。
事務員さんの辛い気持ちです。

その人のことを思うと…
配達員にとっての「その人」は身近な仲間、事務員さんなのです。
その事務員さんが悲しい思いをした、その事実を1枚の紙に記し、書き出し部分に手書きで「必ず読んでください」、最後に同じく手書きで「各自考えてみてください」と添えました。

それからクレームが激減しました。

あなたの仕事を取り巻く「その人」は誰でしょうか?
その人に喜ばれたい、悲しい思いをさせたくない…そんな素直な思いが関わる人の心を動かし行動を変えるのだと思います。

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