会社が社長の器以上に大きくならない理由

ある程度まで成長すると事業規模が縮小してしまう…そんなことを繰り返す企業がたまにあります。
例えば、年商10億の壁です。
10億に近づき「もうちょっとだ」と思うと7億円くらいまで落ちてしまう、そんな繰り返しです。

どうしてそんな事が起きるのか?
原因は様々ですが、僕が見た中で「エゴの壁」があります。
社長のエゴが成長を妨げてしまう、そんな現象です。

劣等感をバネに頑張ったある社長の限界

まずは事例から。
ある社長は、若い頃、ちょっと(相当に)ワルでした。
高校を中退して様々な職を転々として30歳くらいに自動車屋を起業しました。

創業10年でスタッフを6人雇うまでに成長しました。
彼を支えたエネルギーは劣等感です。

高校を中退しているので就職に苦労したし、「え!?中卒なの?」と冷ややかな目で見られることもしばしばでした。
中退を後悔したこともあったそうです。
しかし、劣等感をバネに頑張り続けました。

起業したての頃は信頼がないので、知り合いに営業をかけたそうです。
地域のホームセンターの駐車場にクルマを停め、一日中いると知り合いが来ます。
そこで「久しぶり」と声をかけ営業をしたそうです。

凄いガッツですよね。

会社はどんどん大きくなり、より大きな目標を立てました。
それは「自社ビル所有」です。

彼にとって自社ビルは成功の象徴であり、昔、自分を軽蔑した人への勝利宣言の象徴だったと言います。

ところが、ある規模までは行くのですが、すぐに落ちてしまうという、例の現象が頻発するのです。

社長はその理由が分からなかったかもしれませんが、僕は知っているのです。
スタッフに何度も相談を受けたからです。

ビジョンよりも先に、個々の望みに目を向けることが大切

その理由の前に「エゴの壁」について確認します。
人の欲求は大きく分けると3つあります。

①、個人的、経済的、物質的な欲求
②、関係性の欲求
③、自己実現の欲求

マズローの欲求段階説をザックリと3つに分類したものね。

人によって持っている欲求は違います。
例えば、僕が新聞店を経営していた時のスタッフの中に「ベンツが欲しい」という若者がいましたが、彼の欲求は①です。
「仲間と力を合わせて仕事がしたい」と言ったスタッフは②です。
②まで行くと、仲間との協働の中で自分の得意が活きる領域が見つかります。
すると③に到達します。

これは非常に面白くて、③まで行った人は仲間とともに協働した結果、経済的な富を得やすくなります。
全部が手に入るわけです。

さて、件の社長の話に戻ります。
彼は①のエネルギーが強すぎたのです。
強い分には良いのですが、社員の①に意識が行きなかったのです。

だから社員からすれば「社長の野望のためにオレたちがいるわけじゃない」となる。
エゴとエゴがぶつかります。
すると、優秀な営業マンが他社からスカウトされた時に、上得意客とともにそちらへ移ってしまうのです。

だから壁を突破できずに元に戻ってしまったのです。

僕は思いました。
もし社長が「自分と同じように社員にも叶えたいことがある」と知り、「それをみんなで力を合わせて叶えよう」と言ったらチームは1つの方向に向かったのではないかと。
そして、協働する中でチーム内の関係性が豊かになり、それぞれに自分の居場所ができ、仕事から最高のギフトが得られたのではないかと。

結果的に自社ビルも夢ではなかったかもしれません。

ビジョンも大切ですが、個々の望みに目を向けることが、まずは大切だと考えます。
そして、みんなの望みを統合させる実務が求められると思うのです。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。

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