ピンチの時には、経営者は組織の「恐れのマネジメント」を行うべし

人が利他的な行動をするには「安心」が必要

コロナ禍でマスクや食料品の買い占めが問題になりました。
オイルショックの時も東日本大震災の時も起きました。
そんな時に、必ず「分け合えば余る。奪い合えば足りなくなる」と言う人がいます。
真理を突いた金言だと思います。

しかし、分かっていても買い占めは防ぐことは難しいと思います。
なぜならば恐れがあるから。
「買い占めをする人がいる可能性がある以上、行動しないと損をする」と思うからです。

恐れは人の行動を狂わせるのです。
これは企業でも同じだと考えています。
恐れが渦巻く組織では、全体利益ではなく自分の利益を優先し、よって全体が栄えず、結果的に自分も損をするなんていう悲劇が起こります。

先日、呉服店を経営する方から興味深い話を聞きました。
よく、おばあちゃんが孫が二十歳になった時に振り袖をプレゼントすることがありますよね?
伝統的な習慣だと思いますが、これが起きる家庭とそうでない家庭を長年見てきて、その違いを発見したそうです。
それは「家族の仲が良いかどうか?」だそうです。
おばあちゃんと孫の関係ではなく、おばあちゃんと息子、嫁の関係です。

どういうことか?
おばあちゃんと息子夫婦の関係が良いと、もし自分の身に何かあった時でも助けてくれるという安心があります。
安心感がないと、自分で何とかしなくちゃいけないと考えるのでお金を溜め込む傾向があるそうです。

このことから分かる事は、おばあちゃんの人徳ではなく環境で決まるということです。

正確な情報開示と未来を創る意思を伝えること

話を企業に移します。
先日、ある企業に勤める方から相談を受けました。
その会社はコロナの影響で業績を落とし、リストラをすることが決まりました。
詳しく話を聞き、最悪の事態に陥る危険性があると思ったのです。

人員を減らすことで残った社員の作業が増えます。
朝から晩までギッシリとスケジュールが詰まるそうです。
仲間を助けるゆとりはありません。

さらに経営陣は、将来、追加のリストラの可能性に言及したそうです。
その際に、「そうならないように頑張れ」と言ったそうですが、何と馬鹿なことを言ったのかと呆れてしまいました。

こうなると社員さんは自分の身を守ることを最優先しますし、それが合理的な判断です。
仲間を助けることが損な行動となり、1人1人が合理的に行動すると全体が破綻するという恐ろしいことが起きるのです。

どうすればこういう事態を防ぐことができるのでしょうか?

話を買い占めに戻します。
トイレットペーパーの買い占めが問題になった時に、あるメーカーが大量の在庫の写真をSNSにアップし「大丈夫です!」とメッセージを投稿しました。

経済学者がこれに対し「最適な行動です」とコメントしていました。
メーカーの行動を要約すると、確かな根拠(写真)の開示とともに明確なメッセージを投げかけたということです。

企業も同じだと考えます。
先日、星野リゾートの星野佳路社長がテレビ番組でこんなことを言っていました。
「先行きが観えない中でも、情報開示を行うとともに、予測をすることが大切だ」
ずいぶん、恐れが軽減されると思います。

人は合理的に行動をしますが、それが富を招くものであるために、経営者は環境を整えることが大切と考えます。
すなわち情報開示と未来を創る意思です。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。

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