損をして徳を得て、やがて大きな得を掴む

人は本当に困ると、どんな事でもやります。
良いことも悪いことも。
ブレークスルーを起こす可能性もあるが地獄に落ちる可能性もあると思います。
よく「右手にそろばん、左手に論語」と言いますが、今こそ重要だと考えています。

混乱すると詐欺が横行しますよね。
勝手にマスクを送りつけたり給付金の詐欺メールが出回ったり…
混乱時には金に困って何でもやるという悪党が増えます。
一方で、金に困っているからそれに乗ってしまう、そんな危険性もある。

経営者も同じで、詐欺こそしませんが徳のない商売に成り下がる危険性はある。
論語とそろばん、両方をしっかりと見ることが大切だと思うのです。

先日、あるホテルの経営者の話を聞く機会がありました。
そのホテルは外国人旅行者を対象にしているので今、本当に大変です。
稼働率は10%以下…こうなると誰でも焦って「そろばんの罠」に嵌る危険性があると思います。

しかし、この経営者は違いました。
悩み、もがいた末に、全館、そして関連企業の休業を決めました。
社員の幸せが一番という理念があり、この非常時でもそれに則った。
さらに社員の休業補償に関しては、当初、パートさんは除外することに決めましたが、後に「全員」と修正をしました。

「補償しないと行きていけないスタッフがいるんですよ」…涙ながらに言いました。

肚を決めたら行動です。
あらゆる金融機関を駆け巡り借り入れのお願いをし、キャッシュを確保しました。

ホテルの社員さんの話も聞けました。
「こんな良い会社は他にはない」…今、再開に向けて独自で勉強をしているそうです。

損をして徳を得て、やがて得が訪れる…僕はそんな予感を感じました。

僕の親友は、病院のカーテンなどのリースを行う会社を経営しています。
通常、ルートセールスの営業マンが病院を訪問しますが、今は営業の話はできません。
というか訪問することも控えています。

そんな中、親友は違う判断をしました。
社長自ら、1人で、完全防備をして訪問しているのです。
その理由は、医療関係者は今、ストレスの限界に達していると考え、辛い気持ちの聞き役だけでもしたいと思ったからです。

売上にならない訪問です。

しかし、やがて、この徳は大きな得に変わると思います。
「一番辛い時に、私たち病院スタッフを支えてくれた」…事態が収束した時にはライバルがいない独占市場になると思います。

これらの事例は美談ではありません。
徳を得て得を得る。

熱い心とクールな頭脳…徳と得、両方を考えた経営者の真の姿だと思うのです。