細かな管理をしないと経営できない会社は生き残れないのかもしれない
個人の責任領域を明確にすることで起きる問題
リモートワークにより「働かないおじさん」が問題化しています。
出社をしていた時は、何となく働いているように振る舞っていたものが、リモートワークで責任領域が明確になると、実は何もしていなかったことがバレたわけです。
リモートワーク成功の要は責任領域を明確にすることと言われますが、それによる課題も浮き彫りになっています。
その課題の1つは「部分最適」の問題です。
つまり、自分の責任が明確になることで視野が自分のことに集中しすぎて全体を観れなくなるということ。
僕は、たくらみ屋の相棒、森本繁生にこのことを教えてもらいました。
仕事は、流れと繋がりで成果を上げます。
例えば、ある製造業では1日あたり10の材料仕入れの能力があるとします。
で、製造は8。
梱包は5。
販売能力は10。
この会社が1日にお客様に届けられる数は「5」ですよね?
「一番弱い部分が全体を決める」ということです。
ということは、梱包以外の全部署がパフォーマンスを5まで落としても会社全体のアウトプットは変わりません。
それどころか、バラツキがあると梱包の工程に未処理の製品の山ができます。
これがキャッシュの減らす原因です。
パフォーマンスを5に落としてもアウトプットは変わりませんが在庫が出来ませんのでキャッシュの状態が良くなるわけです。
さらに、梱包以外の工程が5まで落とすと、ゆとりが生まれますので、梱包を少しだけ支援すればアウトプットは増えます。
増えても全員が今までよりも早く仕事が終わります。
頑張らない方が良くなる…すごい話しですよね。
個人の責任領域を明確にして成果を求めると、こうした協働は起きづらい。
だから、チームに課題を与えることが大切だと考えるのです。
上が決めて下にやらせる構図では変化に弱い
個人の責任領域を明確にするということは、業務委託のような契約になります。
経営陣が戦略を練り、業務をデザインし、必要な仕事を最適な人材に依頼します。
一見、合理的に見えますが、ここにも大きな落とし穴が隠されています。
それは変化への対応に弱くなるということ。
これからは、これまで以上に変化のスピードが早くなります。
変化に応じて経営陣は意思決定を更新するわけですが、仕事を振られたスタッフはたまったもんじゃありません。
「言うことがコロコロ変わる」と不満を持つようになる。
ヤル気を維持するのも大変ですし、精神的に病んでしまいますよね…
そうならないためには「上が決め、下の者がやる」という従来の在り方を変える必要があると考えます。
つまり、メンバーが意思決定に関わる「集団参画型」の経営で、変化をつくり出す当事者になることです。
例えば、確か2003年だったと思いますが、当時、窮地に立たされたIBMでは、全世界の社員をオンラインでつなぎ、三日三晩、IBMはどうあるべきか?を語るフォーラムを開催しました。
ルールはゆるく、どんなことでも発言できたそうです。
確か、10万人以上が参加したと記憶しています。
フォーラムは、何も決まっていない…「空」の状態で行われることが重要です。
決まっていることを遂行するなら従来のトップダウン型が有効だからです。
自由に、ウダウダと対話をする中から紡がれてくる文脈があり、それが「自社らしさ」といった高度な理解に繋がり、それを自分事にします。
今日の2つの問題は、何もリモートワークに限ったことではないと思います。
出勤型の職場にも言えることだと考えます。
細かな管理をしないと経営できない企業は、これからますます大変になると思います。
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。