数値を上げ続けなければという幻想から早く脱却しよう

人口増加の時代を基にしたモデルが通用しなくなった

私たちで子どもの頃から「よりたくさん」と教育されてきました。
テストで70点を取ったなら、次は80点を目指そうと向上意欲を持つことがよしとされてきました。
それは人間の本能みたいなもので、発展には欠かせない大事だと思います。

しかし、商売において「成長=数値」の発想には限界があると思います。
その理由は、この発想は資本主義を支えた論理であり、人口が増える時代の論理だからです。
今は人口減少社会です。
特に、日本は世界に類例を見ない「棺桶型」の人口分布になっています。

総務省「人口推計の結果の概要」より

この時代では成長の概念を根本から変える必要があると思うのです。
数値的に大きくなることが悪いわけじゃない、結果的にそうなったら嬉しい。
でも、それを追わないことだと考えるのです。

僕が人口減少社会の行き方を学んだのは、ある書籍です。
「人口減少逆転ビジネス」(古田隆彦 著 日本経営合理化協会出版局)

お値段を見るとビックリですが、内容が濃い。

そこには人口減少社会を生き抜く要諦が書かれていました。

人口は何で決まるのか?

人口は「人口容量」で決まると言われています。
人口容量とは、スペース(空間)と確保できる食料で決まります。
例えば、デカいペットボトルの様な容器にハエをつがいで入れておきます。
すると繁殖が始まり人口(ハエ口?)が増えますが、永遠に増え続けるわけはありません。
窮屈になると繁殖を止めますし、窮屈じゃなくても人口をまかなえる食料がないと増えません。

人間に関して言えば、スペースは住宅の高層化で増やしてきたし、食料(生活財)は機械化や輸入で効率よく増やしていきました。
つまり人口容量を増やしてきた。

しかし物理的な限界はあります。
すると人口は増えなくなります。
医療が発達すれば棺桶型の人口分布になるのは当然だと思います。

人口減少時代の商売の在り方とは?

人口が減っても生活財の生産能力は落ちません。(機械化のため)
すると生活財は値を下げ買いやすくなります。

その分、良い意味でのムダの消費が盛んになるというのが古田先生の主張です。
過去に数回の人口減少社会があったそうですが、どの時代も文化が爛熟したそうです。
例えば、縄文時代で人口減少が起きた時には、土器にものすごい装飾が施されていました。
(人口増加の時にはツルンとシンプルだった)

江戸時代の中期から後期では屋台や浮世絵、根付(印籠に付けるストラップのようなもの)が誕生しました。

僕は、良い意味でのムダな価値を「感性価値」と呼んでいます。
※感性価値はワクワク系マーケティングの小阪裕司先生から教えてもらった概念です。

現在は、これらの時代にとても似ていると思います。
もしかすると、モノに溢れた成熟期を迎え大量生産・大量消費の限界=人口容量の限界から人口現象が起きているのかもしれません。

おそらく基本的な生活財は大手がほぼ独占すると思います。
小さな会社の役割は、より心の豊かさの提供に絞り込まれると思います。
そうなると「数を増やす経営」ではなく「感性価値を大きくする経営」にシフトすると。

数値が増えることが悪いわけじゃない。
追うと遠ざかると考えるのです。

僕が時々行く、とても素敵なお寿司屋さんは、店舗をリニューアルした際に席数を2割ほど減らしました。
絞り込み、より高い感性価値を提供していますので、お客様は増えています。
スタッフも増やしました。

数値を上げ続けなければという幻想から早く脱却する時代だと思います。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。

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