憧れではない職業に就いた人が、仕事大好き人間になるまでの過程
多くの職業は憧れの職ではない
御社の社員さんは、どういう動機で今の職業を選んだのでしょうか?
クリエイティブな職種の場合「その仕事がやりたいから」という主体的な理由で入ってくる社員さんが多いと思います。
ところが、多くの企業では、稼ぐために選んだという消極的な理由で入ってきた社員さんがいると思います。
僕は23年間、新聞販売店を経営してきましたが、憧れで入ってきた人はいません。
会社員時代は都内のドラッグストアに勤務していましたが、僕を含め、同僚が会社を選んだ理由は「自分が入れる会社が他になかったから」という理由でした。
こういう場合、基本的にモチベーションは低いです。
「やりたくないが生活のために我慢する」という欠乏を回避するモチベーションだからです。
こういう人に対し、社長がいくら自己実現や自己成長の意義を説いても理解してくれません。
では、より高質なモチベーションに昇華することは不可能なのでしょうか?
そんな事はないと断言できます。
僕は、新聞店を経営する中で、モチベーションが進化した人を何人も見てきました。
同時に、変化のプロセスも観察してきました。
その結果、3つの段階を経て自己実現に至り、そこから、さらに上のモチベーションに進化することが分かりました。
これはマズローの欲求段階説をシンプルにしたもので、企業で取り組みやすいものだと思います。
まずは稼ぐ欲望のモチベーションから立ち上げる
まずは金です。
生活のために我慢して働く人にとって、金は最も火が付きやすいモチベーション源です。
ただし、「ニンジンをぶら下げる」という発想ではダメ。
50年も前から、数々の心理学者によって他者によって刺激されたモチベーションは長続きせず創造性も低いことが分かっています。
今の時代には向いていません。
自分から「稼ぐぞ」と思える仕組みが大切です。
そのためには業績(売上総利益)に連動した賃金制度が必要です。
「これだけ儲かったら、これだけ賃金が増える」という制度を整備します。
すると、社員さんはこの制度を活用し始めます。
「これだけ賃金を増やしたいから、これだけ儲けをつくる」と。
この件に関しては、この記事が参考になると思います。
「社員のヤル気と自発性を高める目標設定はこうして決める」
つまり、経営計画(数値)は、社員さんの人件費を起点に考えるのです。
火が付きやすい現実的なモチベーションですが、実は長続きしません。
そこで、次なるモチベーションに進化することが大切です。
稼ぐモチベーションから共創のモチベーションへ
次なるモチベーションは社会性のモチベーションです。
簡単に言うと「みんなでやると楽しい」というもの。
これは指示ゼロ経営が最も得意とする分野です。
指示ゼロ経営では「チームに対し」課題を与えます。(チームが育つと自分たちで課題を設定するようになる)
チームで課題を持つと、集団内に学び合いが生まれ個々の成長が加速度的に進みます。
三人寄れば文殊の知恵が出ますのでクリエイティブになるし、実行段階では助け合いが行われ仕事がキレイに進みます。
人間にとって他者との関わりは本能的な欲求です。
最初は、お金の欲で立ち上げたモチベーションですが、チームで取り組むと社会性のモチベーションに切り替わります。
お金のモチベーションよりも継続性がありますし、知恵が出ますので仕事が上手く進むようになります。
自分たちで知恵を出し協働したことで成果があがると、もっと愉しくなります。
個が活きる実感はすさまじいモチベーションになる
指示ゼロ経営ではチームが課題を持ちますが、個々人の役割も明確にします。
役割はリーダーが決めず、自分たちで考え決めてもらいます。
すると、自然と自分が得意なこと、才能が活きる分野を担当するようになります。
たとえ憧れの職業でなくても、仕事に自分の才能が活きると最高に愉しくなります。
これが3段階目の「自分が活きる悦びのモチベーション」です。
この段階に到達すると仕事中毒になる社員が出ます。
いきおい長時間労働になりがちなので注意が必要です。
個を超越したモチベーションに進化する
3段階で進化したモチベーションは、やがて最上のモチベーションに進化する可能性を秘めています。
それは「個を超越したモチベーション」です。
チームで協働する中で自分ならではの役割を演じるようになりますが、それは個で完結するものではなく他者との関係性の中でのみ生きます。
それに気づくと、仲間への感謝が芽生えます。
自分に対する誇りと仲間への感謝が統合された領域です。
「自分だからこそ」と「自分1人ではできない」の統合です。
ここまで行くと、1年前には生活のため、と死んだような目で働いていた人が、目をキラキラ輝かせて仕事をするようになります。
モチベーションは現実的に、したたかに積み上げていくことが大切、そう考えています。
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。
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