中小企業の人手不足の正しい解決法

中小企業を中心に人手不足が原因の倒産が増えています。
原因を聞いて驚きましたが、人手が足りなくて営業ができないのかと思いきや、そうではないようです。
今いる社員が他所に行かないように賃金を引き上げたことによる収支悪化が多いそうです。
また、求人を出しても集まらないから高待遇を謳う、すると既存社員との賃金バランスを取るため賃金ベースを上げざるを得なくなる。

そんなケースが多いそうです。

僕は23年間、人手不足の代表業界である新聞販売店を経営してきました。
だから、件のケースは痛いほど理解できます。

でも、人手不足を高待遇で凌ぐのはやめた方が良い。
後で、しっぺ返しが来るから。

では、どう対策すれば良いのでしょうか?

中小企業は人手不足を賃金で解決してはいけない

賃金を上げれば社員は「一時的に」喜ぶでしょう。
しかし、1ヶ月もすれば慣れてしまいます。あれほど感謝した社員が「大変な仕事だから、このくらいもらって当然」と言うようになるかも知れません。
人件費だけが上がりモチベーションは変わらない…これでは悲しいですよね?

また、離職を引き止める効果も疑問だと思います。
業界や地域で圧倒的な高待遇なら効果があるかもしれませんが、そうでない企業にとっては焼け石に水です。

僕が社長在任中に、地域に大型店が出店しました。
非常に雇用吸収力があり、大量の採用を地域に仕掛けました。しかも高待遇。
戦々恐々としましたよ。
相手に合わせ賃金を上げましたが、後になってやめておけば良かったと思いました。

弊害があるのです。
まず、引き止め効果はなかった。
また、一度上げると社員は二度目を期待します。
自分たちの努力で獲得したものではないから経営者に依存して、さらに要求する者が出ました。
期待に添えないと人は不満を持つようになります。
僕からしたら、清水の舞台から飛び降りるような覚悟で賃上げをしたのに、それが不満の種になるのだからとても悲しかったし腹立たしかった。

また、高待遇で集まる人は、仕事のやり甲斐よりも衛生要因(労働条件)に関心が偏っている傾向があり、お金にならない仕事をやりたがりませんでした。

会社と働く人の未来を描く

それでも、僕は投資が返ってくると期待していました。
しかし、叶うことはありませんでした。
賃金を上げたからといって業績が良くなるわけではありません。

そこで採用の考え方とやり方を変えました。
高待遇で釣る発想は、マーケティングでは値引きと同じです。
消耗戦になり経営は疲弊します。

待遇も重要ですが、仕事へのやり甲斐を考慮した採用に変えました。

それは「会社の未来」と「働く人の未来」を前面に出した採用です。

内閣府の「国民生活に関する世論調査」に「これからはモノの豊かさか、心の豊かさか?」という調査があります。
これによると約6割が心の豊かさと答えています。
これだけ見ると、単純に「モノより心」と解釈を早合点してしまいそうですが、オール・オア・ナッシングではないと思います。
ある程度、高水準の物質的な豊かを求めるが、より心の豊かさかにシフトしているということだと考えています。

会社として何を目指すのか?…それにやり甲斐を感じ、同時に収益性のある未来を前面に出した求人資料をつくりました。

例えば、新聞店の地域ネットワークという資源を活用し、地域づくりの拠点となり、企業や起業を支援し、売り手と買い手を繋ぐ、といった具合です。

また、「働く人の未来」…当社で働くとどんな働き方ができるのかを書きました。
具体的には「自分の個性が仕事で活かされ、自分ってイケてる」と感じることができると伝えました。
面接では業績に連動した賃金のことも伝えました。
同時に、それは甘い世界ではなく苦労が伴うことも。
会社にいれば誰かが実現してくれるのではなく、自らが主体者になることを求めました。

これに共感した人は辞めないし、こういう会社で働きたい人は数多くいます。
1名の募集に対し90人以上の応募が来たこともありました。

描いたことは、まだ実現していない未来の話です。
だからこそ本当に実現する意志のある人が集まるのだと思います。

求人広告には、今ではなく未来を描く、これが人材不足解消の要諦だと考えます。

それでは今日も素敵な1日をお過ごし下さい!


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