論理的に伝えるだけでは組織は動かない。情動に訴える「声の経営」をしよう
企業の経営計画書は面白くない…僕は常々そう感じています。
「面白いとかそういう次元のものじゃない」と言われることがありますが、そんなことはないと思います。
なぜなら人間は情動の生き物だから、ワクワクしないものに自発性もモチベーションも発揮されないからです。
勿論、理性や論理を否定するつもりはありません。
それらを使い分け、優先順位をつける必要があると考えているのです。
理屈が正しくても人のモチベーションは高まらない
先日、すごく興味深い話を聞きました。
平昌五輪の金メダリスト、小平奈緒選手の凱旋パレードで、沿道で小平選手の写真集を売った会社がありました。
沿道沿いに3箇所ブースを設置したそうです。
すると3箇所ともに同じ現象が起きたそうです。
それは、パレードの車が近づくと写真集が突然、売れ出すそうなのです。
3箇所ともそうなのだから何か理由があるに違いありません。
販売した方が感じたことは、パレードが近づいた時の興奮が購買意欲を刺激するということです。
面白い現象ですよね?
以前に、同じような話を聞いたことがあります。
ジャパネットたかたのテレビショッピングでは、高田さんの声が裏返った直後に、最も注文の電話が鳴るそうです。
分かる気がします。
本人の感情が高ぶり、それが視聴者の情動を刺激するのだと思います。
「人は情動が第一義、理性は第二」…脳科学者である、故・松本元先生の著書「愛は脳を活性化する」によると、人間は生物学的に情動が優先された生き物であるそうです。
例えば、暗い夜道を歩いている時に足元で「ガザっ」と音がしたら、まずは逃げますよね?
その後で、よく見たら単なるビニールだったと確認をしたら安心します。
まずは快・不快を司る大脳辺縁系という部位が動き、それが行動に直結するそうです。
後で理性(大脳新皮質)で整理し、その後、情動に「大丈夫だよ」とフィードバックをするそうです。
この原則は企業経営、特に新しいことを始める時に経営者が心得るべきことだと思います。
つまり、理屈として正しいことを伝えても人のモチベーションは高まらないということです。
同時に、後できちんと理屈も伝える必要性があると考えるのです。
情動を基本にし理屈で補完する経営
声を高ぶらせ「やるぞー!」と言ったのに対し、間髪入れず「おおー!」と同調するタイプがいます。
情動優先タイプです。
彼らは、僕が賞賛の意味を込めて「アホ」と呼んでいる人種です。
非常に少数派で集団内に数パーセントしかいないそうです。
しかし、集団が動くためには絶対に欠かせない存在で、彼らが動いた後にフォロワーが続いていきます。
ところがフォロワーが動くためには「正当な理由」が必要です。
彼らは小平選手のパレードが近づいてきても、すぐには動きません。
でも情動は動いている。
僕が推測する正当な理由とは、情動のままに行動する人を見た時に「早く買わないと売り切れちゃう」と思ったのではないか?と考えています。
きっと、販売する時に「数量限定」と謳えば、もっと効果があったと思います。
話を経営計画書に戻します。
多くの企業の計画書は理性優先で書かれたものが多いと思います。
文字通り「書かれている」です。
「経営理念」「当社の沿線」と続き、今期計画がキレイにまとめられています。
事業ドメイン、市場セグメント、顧客ターゲット…数値とグラフで整理されているのですが、意味は分かるが心が踊らないものが多いと感じています。
「物語性がない」…これは人間は情動の生き物という理に適っていないと考えるのです。
僕は事業計画書を「未来の日付を入れた新聞」に描くBMR研修を行っています。
新聞に載るような社会性・話題性のあるビジョンと、その実現のためのプロセスを物語で、文字通り「描く」のです。
未来の物語が脳内で動画で再生されることを狙ったものです。
しかし、まずは社長から思いを語る…声で伝えることが大切だと考えています。
声には本人の感情が乗ります。
プロの役者でもない限り、思ってもいないことに気持ちを込めることはできません。
正直な思いにしか気持ちは乗りません。
感情がこもった声は聞き手の情動に直接、訴えかけます。
プロセス(理屈)はその後の話だと考えるのです。
人間は情動の生き物だから、ワクワクしないものに自発性もモチベーションも発揮されない。
情動を基本にした経営を考えることは、とても大切なことだと思うのです。
それでは今日も素敵な一日をお過ごしください。
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