なぜ、その老人は200円の花に1万円も払ったのか?

お金は何に対し支払われるのか?…先日、そんなことを考えさせられる出来事がありました。
商品・サービスに対して?
違うと思いました。
「価値に対し支払われる」…では価値ってなんだろうか?
クリスマスイブにそんなことを考えたいと思います。

200円の花に1万円を払った老人

先日、弊社の恒例イベント「突撃サンタ企画」を行いました。
地域で1人暮らしをしている高齢者のお宅に、プレゼント(お花)を持ってサプライズを仕掛ける企画です。
5年前に始め、恒例イベントになりました。

僕は痩せているのでサンタの衣装が似合いません。
最初に突撃した時は、おばあちゃんが出てこないんです。
インターホンを鳴らして「どちら様ですか?」って聞くから、元気よく「サンタでーす!」って言うと沈黙の後「ウチは結構です」って断られちゃう(笑
当然だよね…(笑)
なので「共和堂の米澤です」と名乗るようにしました。
当然だよね…(笑)

5年前は弊社だけでやっていたのですが、とても喜ばれるので地域のお客様に「一緒にやりませんか?」と誘ったところ、年々、お手伝いしてくれる人が増えていきました。
今年は子どもたちも参加してくれ大賑わいでした。

子どもたちも良い経験になったと思います。
だって、感激のあまり泣き出すお年寄りがいるんだもん。
多くの方が「寄ってお茶でも飲んでいきなさい」って言ってくれる。
1人暮らしだから寂しいんだよね。
僕たちもお話を聞きたいからお言葉に甘えることにしています。

 牛乳、美味しかったです。

先日、お邪魔したあるお宅でとんでもないことが起きました。
なんと!おじいちゃんがお礼にと1万円札を渡そうとするのです。
1万円ですよ。
プレゼントのお花は200円くらい。
そこに手書きでメッセージを書き込むだけです。

もちろん、いただきませんでしたが…
いや、今は、いただいた方が良かったのでは?と考えています。

商品・サービスに心が乗った時に、それに見合う対価がいただける

そのおじいちゃんは、いったい何に対し1万円を払ったのでしょうか?
お花?…違いますよね。
サプライズ?…それも違う。
目に観えるものに対しての対価だとはどうしても思えないのです。

僕はその場にいたからそれが分かります。
僕の考えはこうです。

僕と同行したのは小学3年生の女の子、高校2年生の男子、大学2年生の女子でした。
彼らは今回のイベントのお手伝いをした感想をこう言っています。
「喜んでくれる顔が最高に嬉しかった」
嬉しい、喜んでいるのは自分たちなんです。
もしかしたら、最初は「1人で寂しい老人を喜ばせよう」という動機だったかもしれない。
でも、やった人は分かるのですがサンタが一番、嬉しいんだよね。
サンタを見た瞬間の驚きと、おしゃべりしている時の輝く表情…これに触れるのが最高に嬉しいし元気になる。
「そこに生命が立ち上がる」…それを感じられるんです。

92歳のあるおじいちゃんは僕たちにこう言いました。
「15年前に女房に先立たれてな、今でも毎日、女房との思い出が頭をよぎるんだよ。寂しいんだよ」

それを聞いた僕たちには可哀想とか同情の気持ちはありません。
「寂しい」と言っているおじいちゃんは、まさに今、生命を燃やして生きている…そう感じて感動するのです。

おばあちゃん、おじいちゃんは、お花でもサンタでもなく、おばあちゃん、おじいちゃんから立ち上がる生命に触れた僕たちの姿が嬉しかったのだと思います。
「生命の立ち上がりが互いに起きる場」…独居老人にとって決して安くない1万円は、それに対する対価だと思うのです。

僕は、商売の極意を得た感がありました。
お客様から立ち上がる生命を観る、自分が感動する。
自分にできることは何でもしたくなる。
商品・サービスにそんな心が乗った時に、それに見合う対価がいただけるのだと思います。
とてもとても有り難い対価です。

だから、僕は今回の1万円はいただいた方が良かったと思ったのです。
いただかなかったのは失礼だと思った。
だって、お断りしたら、おじいちゃん、すごく寂しそうな顔をしていたもん。

お金は何に対し支払われるのか?…そんなことを考えさせられる今年の突撃サンタ企画でした。
もう一度サンタの衣装に着替えて「やっぱ、昨日の1万円、もらいますわ」って言いに行こうかな(笑)

それでは今日も素敵なクリスマスをお過ごし下さい!