「お駄賃」から「おひねり」へ…賃金の“質”を変える働き方改革

近年、日本の賃金が上がらないことがクローズアップされ、一気に賃上げムードが高まりました。
そんな中、一昨年、僕は「賃金が上がる!指示ゼロ経営」(内外出版)を上梓しました。
書籍の中で、「賃金をおひねりにする」という考え方を提示しました。賃金の額が上がる下がるというモノサシ(量)だけではなく、質的な充実を「おひねり」という概念で説明しました。

賃金には2種類あります。
「お駄賃」と「おひねり」です。
お駄賃は、他者に言われたことを期待通りに行った時にもらえるお金。
「おひねり」は、自らの創意工夫で創造的な仕事をした時にもらえる、感謝や驚きなどの気持が乗ったお金と定義しています。

本来、職業人は「おひねり」をもらっていましたが、「分業」の登場で一気に賃金のお駄賃化が進みました。
分業は、アダム・スミスが「国富論」の中で初めて紹介し、世界中に広がりました。分業では、管理者が設計した工程を細かく分けて、そこに人を配置します。
人間は、いわば機械の一部のようになります。生産効率は上がりますが、アダム・スミスも同著の中で指摘している通り、働く喜びや充実感は毀損されます。

僕は2019年に上梓した書籍「指示ゼロ経営」(内外出版)でも、今回の新刊でも「ひとしごと」という概念を紹介しています。工程の「最初から最後まで」を丸ごと担うことを言います。
「ひとしごと」担当すると、「これは自分が作った製品(サービス)」と誇りを持ち、仕事が愉しくなります。
お客様が喜んでいる姿を見れば、「ひとしごと」した人は最高の喜びを得るでしょう。

もう1つ重要な点があります。
お客様も、ひとしごと頑張る人に対し感謝や応援の気持を伝えたくなるのです。そして伝えた時に、自分の心の中に温かい気持が生まれるのです。

その気持を働く人が受け取ると、彼らの内側から力強さと持続性を兼ね備えたモチベーションが発生します。
そして、「恥ずかしい仕事はできない」「もっと喜ばれたい」という意欲が生まれ、さらに高質な「ひとしごと」を行うのです。

顧客の喜びが、働く人の意欲を生み、意欲が喜びを生むという、持続可能な循環が生まれます。

これは分業ではなかなか起こらない現象です。
分業で生産された製品・サービスは、作り手の顔は見えず、「ひとしごと」で見られるような応援や感謝は起きづらい。
お金を払った時点で「取り引き」は完了します。

「ひとしごと」の世界では、取り引きというよりは「応援し合う」という関係で、お金を払ってからも関係が続きます。

僕が、賃金のおひねり化が必要と提唱するのは、もう現代はモノに満たされており、新しい豊かさが求められるからです。

賃金をおひねり化するためには…

□最初から最後まで「ひとしごと」関わる。
□お客様との関係性を顔が見えるものにし、気持を伝える仕組みをつくる。

そんなことができれば、賃金問題は、「量」の問題を超えたまったく新しい着地点に行くと思います。
そこに広がる世界は、今よりも少しだけ平和になっているのではないでしょうか。
ビジネスがそんな役割を果たすことを祈っています。
.

※「記事が面白かった」という方は、是非「読者登録」を!読者優先セミナーや無料相談など、登録者限定の秘匿情報が届きます。


▷セミナー、イベント、社内研修のお知らせ

指示ゼロ経営マスタープログラム12期(2025年7月4日開講 全5回コース)

・自発的に共創するチームワークの条件
・短時間で豊かなアイデアを出す会議の進め方
・全員参加のプロジェクトの組み立て方
・自律型組織特有の部下との接し方
・自発的、継続的にPDCAを回すための仕組み
自分たちで課題を見つけ協働で解決する組織の絶対条件を学びます。

社内研修のご依頼はこちら
みんなで学び一気に指示ゼロ経営の文化を創る。
現在「社内研修」を2社、「研修から伴走までの完全パッケージ」は1社受け付けております

講演会を開催したい方
所要時間90分。経営計画発表会や新年決起大会の後に!
・自発的に働く意義と愉しさが体感できる。
・事例9連発!「自分たちにもできる」と行動意欲が高まる。