対立をチームワークに変える。ホテル再建に学ぶ組織改革のヒント
「言葉のキャッチボール」という言葉がありますよね。
相手を慮る言葉を投げ、受け取った人も相手の気持ちや意図を受けた上で返す、そんなコミュニケーションのメタファーとして使われます。
対し、悪いコミュニケーションを「言葉のドッジボール」なんて表現をする人がいて、上手いこと言うな〜と関心しています。
キャッチボールやドッジボールは1対1のコミュニケーションですが、僕は、理想のチーム活動を「玉入れ競技」で例えて説明することがあります。
もうお分かりですよね?
チームの勝利のために、1人1人が自分にできることを能動的に行うという比喩です。もちろんビジネス組織では「ただ投げる」ではなく、より機動的な動きになりますが、あり方としては参考になると思います。
ダメな組織では、玉を仲間に投げつけます。中には外部から来た協力者(カゴを支えるPTA役員)に投げる人もいます 笑
このメタファーを企業の現場で再現した事例として、僕のメンターから教えてもらった、あるホテルの再建エピソードがあるので引きたいと思います。
経営難に陥っていた同ホテルには、「宿泊」「ウェディング」「レストラン」の3部門があり、それぞれが独立採算制で運営されていました。
独立採算制が導入された理由は、宿泊部門が稼ぎ頭で、それ以外は赤字続きという状況下で、宿泊部門から不満が噴出したからです。
「何で宿泊部門が、他の尻拭いをしなければいけないのか?」と。
玉入れ競技で例えれば、突然、玉を仲間に投げつけたのです。
社長は、長期視点から現状を危惧しました。
今は、宿泊部門が稼ぎ頭ですが、今後、立場が逆転することも考えられます。その時に、助け合いが起きるはずはありません。
社長は、ウェディングやレストラン部門が発奮して利益を出せば良いという問題ではないと考えました。
全部門が力を合わせ、カゴを玉でいっぱいにするような組織運営を理想と考えていたからです。
社長は、考えた挙げ句、「独立採算制の廃止」という大きな決断をします。同時に、自部門のことしか考えない民度の低さにも着手しました。
数年後、素晴らしい組織に生まれ変わりました。
三部門から代表者が集まり、プロジェクトチームが結成されました。そこでは「それぞれが利益を出す」という発想ではなく、全部門の協働で価値創造をするという視点から再建策が練られました。
その結果、再建の方向性としては、三部門の中で最も利益額も利益率も高いウェディングの受注を増やすということで決まりました。
その時に、宿泊部門からある提案が出ました。
「ウェディングフェア(見学会)に来たカップルを、その日、無料で泊まっていただこう」
そのアイデアを聞いたレストラン部門からは、「ならば、私たちは、ウェディングがイメージできるメニューをお手頃な値段で提供します」と提案します。
カラクリを明かすと、宿泊の原価は安く、レストランで出た利益でまかなえるのです。
利益もないが損もない。しかし、一泊数万円もするホテルなので、顧客満足度はマックスという素晴らしい作戦なのです。
見学会に来たカップルの多くが、同ホテルで式を挙げ、当日はその家族や親戚が宿泊します。その後、ホテルのリピーターにもなり見事に業績を回復をしたというエピソードです。
それまで、仲間に玉を投げつけていたのが、1つの目的(カゴ)に向かい、各部門が自分なりの玉を投げたということです。
このエピソードから得られる洞察は3つあります。
1、「今だけ、金だけ、自分だけ」の風土を改革する。
2、全員が実現を望む方向性とビジョンを確立する。
3、ビジョン実現のアイデアを全部門が参画して考える。
是非、今日の記事を社員さんと共有していただき、協働のイメージとして活用してください。
その上で、社長、経営幹部、部門長、一般社員にできる「玉の出し方」を考えていただけると嬉しいです。
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