政府の賃上げ圧力で淘汰が加速。中小企業の生存戦略を考える。

政府も連合も、凄まじい賃上圧力をかけてきますね。
連合は中小企業に対し、2024年を超える６％を要求していますし、政府は7.3%を引き上げ目標に定めています。
ちなみに、7.3%の賃上げができる中小企業は1%にとどまることが日本商工会議所の調査で分かっています。
さらに、政府目標の通りに賃上げをした場合、約20%が「休廃業を検討せざるを得ない」と答えています。

このまま賃上げが進むと、淘汰が進み産業界の大改革が起きるのは必至です。というか、それを狙っているのでは？と考えることができます。

今日の記事では、最新情報をもとに、今後の動向と対策の方向性を模索したいと思います。

❚ 成熟社会における中小企業のビジネスポジション

今後の動向を知るには、これまでの経済成長の歴史を振り返る必要があります。
人類がずっと課題としてきたのは「物質的な生活向上」でした。いつでも必要な食料を手に入れたい。暖かい家に住みたい。遠くへ早く移動したい。早く情報を手に入れたい…etc

こうした欲求は産業革命以降、飛躍的に満たされました。
下の図を御覧ください。

縦軸に「開発コスト」横軸に「市場規模」を置いてあります。
緑色の●は「マス」であり「開発コストが安い」領域で、当然ながら産業界はまず最初にここに飛びつきます。
しかし、やがてこの市場は飽和し、寡占化が進み真っ赤のレッドオーシャンになります。というか既になっています。自動車メーカーではトヨタ一強のように、やがて勝者総取りの様相を呈するでしょう。

次に食いに行くのはどこの領域でしょうか。
大企業はマスを相手にしたい＆資金力があるので上の領域に移動する可能性があります。
対し、中小企業はニッチを相手にできる＆資金力がないので左に移動する可能性があります。

❚ 中小企業はプラスサムゲームの領域を目指す。

中小企業はどんな商いになるでしょうか。
勝ち組大企業とパートナーシップを結び、経営効率を高める商いを目指す方法もありだと思いますが、それはそれでしんどい商いになると思います。

やはり、「左側」の領域…一部の人が強く支持する個性的な製品、サービスを扱う商いということになります。より具体的な表現をすれば、「文化的」あるいは「福祉的」なものです。
例えば、パンを焼くトースターは、いまや万人が所有できるようになりましたが、「左側」に移動したバルミューダなどが文化的なトースターを開発しましたね。

この領域は無限の価値を生む可能性があります。
「右側」はゼロサムゲーム（誰かが勝てば誰かが負ける）が展開される傾向が強い。対し、「左側」は、理論上は無限に価値を創造し、みんなが繁栄するプラスサムゲームになる可能性があります。

ゼロサムゲームをプラスサムゲームに変えようとした偉人といえば、織田信長です。
領土争いはゼロサムゲームです。ここから脱却しないと戦国時代にピリオドを打つことができないと考えた信長は「茶道」に着目します。茶器１つに、それこそ何万石に匹敵する価値を創ることに成功し、それを褒美とすることでプラスサムゲームに転換しようと考えたのです。

志なかばで倒れるのですが、その後の文化繁栄と平安の世の礎をつくった人物と言えるでしょう。

❚ 右と左では働き方もまったく異なる

「右側」と「左側」は働き方も異なります。
右側はスケールメリットが強みの源泉なので、大量生産、大量流通を推し進めます。組織は官僚化し、ヒエラルキーが出来上がります。
多くの従業員は、分業化された一部分を専任することになります。
また、社外株主の圧力が強烈にのしかかり、無限の成長を強いられる傾向があります。

対し「左側」には文化的価値をつくる創造性と感性、そして自律的な機動力が求められます。
指示ゼロ経営が目指す経営と言えば、お分かりいただけると思いますので詳細は省きますね。

このまま賃上げが進めば、当然、緑色の●から上にも左にも移動できなかった企業は淘汰される可能性があります。
日本政府は、自然淘汰により企業の競争力を高めることに成功したスウェーデンを参考にしていると言われていますが、スウェーデンとの違いは、スウェーデンではセーフティーネットの整備や教育を政府の責任下で充実させていることです。

日本はどうなることやら。

最後にまとめます。
中小企業が賃上げをしながら生き残るためには…

▢勝ち組大企業とパートナーシップを結び、経営効率を高める商いを目指す。
▢「左側」に移り感性価値の高い商い、独自の豊かさを志向する商いを目指す。

中途半端が一番良くないと思うのです。
日本各地で、巨大なイオンと、小さく個性的なお店が活況で、中途半端な地場デパートなどがジリ貧という構図が見られますが、今後はこの構図がさらに進むと考えています。

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『賃上げムードの先にあるのは天国か地獄か？』
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