弱さを価値に変える「反脆弱性」の経営
古いタイプのリーダーは、人事権を掌握し独裁政治をひきます。
人事権は、いわば生殺与奪の権利であり、非常に大きな影響力を発揮します。
部下は上司に逆らうことができないばかりか、上司にとって耳の痛い「重要な情報」を伝えることをはばかるようになる傾向があります。
こうして、蓋を開ければトンデモナイ事件が起きるのです。
世間の常識とかけ離れたことをし続けた某テレビ局のトップに、古い人間が君臨し続けるのを見るとよく分かりますね。
リーダーが強い権力を持つと組織の命令系統に筋が通り、組織を安定化させる効果があります。
しかし、安定は「死」の範疇です。
老師は死生観を次のようにまとめました。
「生物は生きている時は柔らかく脆いが、死ぬと堅くこわばってしまう。つまり堅くて強いことは”死の仲間”である。柔らかくて弱いことは、生の仲間である」
組織の安定化は、時代が順調に成長する時には有効でしたが、変化の時代には弊害の方がはるかに大きくなります。
今の時代の経営は、例えるなら、グラグラと動く平均台の上をバランスを取りながら歩くような営みだと思います。
動く平均台とは刻一刻と変わる社会を指します。
頑強な人は平均台にしがみつくことはできますが、移動することはできません。
平均台の上をふらふらしながら歩く人は、一見、脆弱に見える方が、実はしなやかで優れているのです。
そんな時代を生き抜くヒントを、ナシーム・ニコラス・タレブという、リスク・不確実性の研究家は「反脆弱性」と名付けました。
脆弱の反対は、普通、「頑強」ですが、タレブ氏は「反脆弱性」と捉えました。
一般的には、頑強とは、外圧や過環境変化に強い状態で、それらに弱いのが脆弱と考えますね。
しかし、タレブ氏は、環境変化や外圧の高まりによって、かえってパフォーマンスが上がる現象を発見したのです。
グラグラと動く平均台(社会環境)を柔軟に歩くことができたらすれば、変化の時代にこそチャンスを掴む確率が高まるということです。
老師が言う「柔らかくて弱いこと」は、反脆弱性のことと考えることができます。
さて、話を人事権に戻しましょう。
指示ゼロ経営を導入した企業の中には、人事権を手放す社長がいます。とはいってもまったくノータッチということではなく、人事には関わります。
要するに、社長の独断で決めず、関係者と対話を重ね、合意のもとで決めるということです。
独裁的な人事権を手放すと、社長は怖い存在ではなくなり、社員は社長に物申すようになります。
すると、社内は不安定になります。
反脆弱性の考え方を知らないと、会社が悪くなったように思ってしまうのですが、実はステージが飛躍したと考えるべきです。
権力を手放すと、頼れるのは人望と共感しかありません。
権力が外れたら「ただの人」とならないように、リーダーには自己研鑽が求められます。
「堅い」「太い」「強い」など、昭和の人間が好む価値観は、もう古いのかもしれませんね。
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