半沢直樹はどうすれば幸せになれるのか?

組織として成果を上げたければ、何をもってしても人間関係を良くすることです。
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授は、良好な人間関係を発端に組織が成長する「組織の成功循環モデル」を提唱しています。

人間関係が良いと、深い対話ができ、良質なアイデアが生まれます。良いアイデアは、行動意欲を刺激し、チームワークなどの行動の質を高めます。良い結果が出れば、メンバー間の信頼関係が強くなり、再び人間関係が良くなります。

これには悪循環もあります。
人間関係が悪いと、ろくでもないことしか考えられず、チームワークの不和など行動の質が落ち、良い結果が出せず、それを他人のせいにして、さらに人間関係が悪化するという悪循環です。

人間の気持ちはコロコロと変わりますので、組織は、日々、好循環に転じたり、悪循環に転じたりと不安定ですので油断は禁物です。

好循環をつくる、あるいは悪循環を絶つためにはどうすれば良いのでしょうか。
つい「他者に優しくする」「相手の気持ちを考える」「感謝の気持ちを持つ」などと、対策が精神論的に偏りがちですが、具体的な行動科学理論に立脚した方法があるのをご存知でしょうか。

それは「しっぺ返し」(専門的には「非ゼロ和」と呼ぶ)という方法です。

しっぺ返しを説明するにあたり、あるゲームを紹介する必要があります。
そのゲームは、2人で行う対戦型のゲームで、両者ともに「協調」と「裏切り」のカードを持っており、「せーの」の合図とともに、どちらかを出します。

2人とも「協調」を出せば、互いに3万円がもらえる。2人とも「裏切り」を出せば、互いに1万円がもらえる。「協調」と「裏切り」にわかれた場合は、裏切りを出した人に5万円がもらえ、協調を出した人は0円です。

このゲームの面白いところは、互いが合理的な判断をして損をしてしまうところにあります。
もし、相手が「協調」を出す場合、自分が「裏切り」を出せば、5万円がもらえます。自分も「協調」を出せば、3万円がもらえます。この場合、「裏切り」を出した方が得ということになります。

一方、相手が「裏切り」を出す場合であれば、自分も「裏切り」を出せば、1万円がもらえる。自分が「協調」をすれば0円となり、この場合も「裏切り」を出すのが得となる。

つまり、相手がどう出ようが、自分は「裏切り」を出すのが合理的となり、互いに1万円しか手にできないということになるのです。

さて、このゲームで最も賞金を増やす方法をコンテストで募集した結果、優勝者が考えたアイデアがあまりにもシンプルで研究者を驚かせました。

そのアイデアは次の3つの法則で成り立ちます。

1、自分からは裏切らない。
2、相手が裏切ったら自分もやり返す。
3、相手が反省したら許す。

自分からは裏切らないが、やられたらやり返す。…「しっぺ返しはするよ」という作戦です。

精神論と違い、とても実用的ではないでしょうか。
実際に、このアルゴリズムを組織に入れて、人間関係が良くなったという事例があります。

僕は、今更ながらにNetflixでドラマ「半沢直樹」(2013年度版)を観ています。
会社員の悲哀と、大げさな勧善懲悪が面白いですね。

しかし、「しっぺ返し」の知見からすると半沢直樹の「人の善意は信じますが、やられたらやり返す。倍返しだ」という信条は、要件として不十分であることが分かりますね。

もし、「やられたらやり返す」の先にもうひと工夫あれば、彼の運命は変わっていたかもしれません。

おっと、まだ観ていない方にはネタバレになってしまいますので、今日はこのへんで。

あ、続編もあるのね。
彼がどうなったか楽しみです。

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