社員が「先生」と呼ばれる商いを目指そう
僕は、すべての職業は「教育産業」になる可能性を秘めていると考えています。
プロとして、顧客が「知りたいこと」を教えて差し上げるということです。
例えば、近所の魚屋さんに行くと、美味しい魚の料理法などを教えてくれます。お客は店主の話に熱心に耳を傾け、中にはメモを取る人もいる。
その様子を見ると、先生と生徒の関係に見えるのです。
教育というと上から目線に感じるかもしれませんが、優れた商いになればなるほど、活動の本質が教育になるのです。
そうなると、社員が仕事に誇りを持つようになります。誇りを持って仕事をすると「教育者」としての素養が磨かれ、より良い仕事をするようになるという好循環が生まれます。
こう言うと「ウチは教育と呼べるような仕事ではない」と言う人がいますが、そんなことはなく、すべての職種に教育化の可能性があると考えています。
事例を引くと分かりやすいと思います。
だいぶ前の話ですが、僕は大阪に出張に行きました。早朝からの仕事だったので前日入りするため新幹線に乗っていると、どうも体調が悪いのです。
京都を過ぎたあたりで熱が出始め、身体中が痛くなりました。
新大阪に着くと、すぐに薬局を探しました。
風邪薬のコーナーに行くと選ぶのに苦労するほど多くの商品が並んでいます。商品の特徴などが書かれたPOPには「ブロムヘキシン塩酸塩とビタミンCが配合」なんて書かれていますが、素人には何のことだがさっぱり分かりません。
選べないので、近くにある薬局も見ることにしました。そこには、先ほどの薬局と同じ風邪薬のにこのようなPOPが付けてありました。
「風邪をひいた、でも仕事を休めない方へ!眠くなりづらい風邪薬です。今日1日を乗り切れます!」
僕が知りたいことは、「風邪を引いたが、仕事を乗り切らなければならない」という課題の解決法であって、薬の成分ではありません。
これが「商いは、顧客が知りたいことを教える教育」ということではないでしょうか。
知り合いの自動車屋さんは、定期的にタイヤの空気圧のチェック法や、ワイパーの劣化チェック法、ウォッシャー液の補充の仕方などをレクチャーする「自分でできる自動車整備教室」を開催しています。
先生は整備士が務めます。
参加者の中には、整備士のことを「先生」と呼ぶ人がいます。ある整備士は、先生と呼ばれた瞬間に、「ああ、私はお客様の安全なカーライフの責任を負っているんだ」と教育者たる自覚を持ったそうです。
僕は昔、師匠に「お金は、知らない人から、知っている人に流れる」と教わりました。風邪薬のことを知らない僕は、それを知っている人にお金を支払うのです。商いの教育化は、社員の誇りを高め、お金の流れを活性化する効果があります。
あなたの商いを、教育の視点から本質を浮き彫りにすれば、これまでとは全く違う風景が拡がるかもしれません。