無難を好む組織風土の壊し方

僕の研修には「三人寄れば文殊の知恵」が出たかどうかを点数で評価できるゲーム形式のエクササイズがあり、とても盛り上がります。
このゲームは、必ず上手くいくとは限らず、みんなで話し合ったらダメになったというケースもありますが、そうなったらそうなったで豊かな学びを得えることができます。

集団には大きく分け4つの状態があり、その中で1つの状態しか文殊の知恵は出ません。

1、独裁状態
2、村社会
3、混沌状態
4、創発状態

4だけが文殊の知恵を出す組織です。アイデアがアイデアを呼び、気づけばユニークなアイデアを全員がコミットしているということが起こります。

4つの中で最も多いのは2の「村社会状態」です。
みんながみんなの顔色をうかがい、当たり障りのない議論しかできず、少数派のユニークな意見は葬られてしまいます。

特に、日本人は逸脱を嫌いますので、村社会の空気は一瞬で醸成されます。無難な意見は、出た瞬間に、多数派が「なるほど〜」とった肯定的な反応を示します。
エクササイズの参加者に出聞くと、「この状態になってから、反対意見を言うのは勇気が要る」と言います。

しかし、エクササイズでは、事前に村社会に陥るメカニズムを共有しますので反論が許されます。
誰かが「ちょっと待ってください」と言った時が本格的なスタートです。

革新は、少数派のアイデアを多数派が認めた時に起こります。
そこには伝播のプロセスがあり、最初に1人のフォロワーが現れ、それが2人、4人と増え、臨界点(20%ほど)を超えた時に潮目が変わります。

フォロワーは少数派に説得されるわけではありません。
実は内心、そう思っているのです。心理学者の
・モスコヴィッシュの「少数派影響理論」によると、そう思ってはいるが、空気を読んで手を挙げない人が多いということが分かっています。
そんな人も、自分以外の誰か1人でも少数派への賛成を表明すると気持ちが変わるのです。
1人が賛成を表明すると、2人目、4人目の抵抗感はぐっと下がります。

要は、1人目の賛同者をどうつくるか?という問題ということになります。

ここで参考になるのが事故が起きた時の救護の要請法です。
事故が起きて、血を流し倒れている人がいるとします。そこに、あなたが真っ先に駆け寄ります。周りの人は、あなたを傍観しています。そんな時に、「誰か救急車を呼んでください」と言っても誰も動きません。
コツは、たった1人を指差し「そこのあなた、救急車を呼んでください」と指名するのです。
1人が動くと、その後は「AEDが必要」「交通整理が必要」など、行動のレパートリーをあげるだけで自発的に動いてくれる可能性が高まります。

このメカニズムを応用するならば、奇抜なアイデアを口にする時は、フォロワーになってくれそうな人を見つめて話をすることです。
フォロワーになってくれそうかどうかは、その場にいて相手の熱量を感じ取れば判断できると思います。
フォロワーになる可能性がある人は、微小ながらも肯定的な反応を示してくれます。逆に、否定的な人は目を伏せます。
肯定的な人は、自分以外に同じ反応を示している人を探します。
そこで仲間を見つけたならば、賛成表明の5秒前といったところです。

ただし、この方法は独裁状態を生む危険性もはらんでいます。目を伏せた人が、反対意見を表明することも非常に重要だということを忘れてはいけません。

ジム・コリンズは書著「ビジョナリー・カンパニー」の中で、イノベーションを成し遂げる企業には「たくさん挑戦し、上手くいく方法を探る」という特徴があることを記しています。
無難に落ち着いたら未来は拓けないということです。

今日の内容は、リーダーだけでなく社員さんと共有することが大切です。回覧していただき、挑戦する風土の醸成に活用してもらえたら幸いです。

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