リーダーが「お口にチャック」をすることで得られる効果

日本は世界の中でもエンゲージメント(仕事に対する熱意)が低いことで知られています。
米国のギャラップ社の調査によると、エンゲージメントを持って仕事に取り組んでいる人の割合は全世界で15%しかおらず、日本に至っては5%という目を覆いたくなるような現状が示されています。

エンゲージメントが注目される理由は、付加価値に直結する要件だからです。
アイデアの創出は、1つの事を考え続ける時間に比例することが明らかになっています。いつも課題が頭の片隅にあって、お風呂に入ったり散歩をしたりしている時に、突然アイデアが降りてくるのです。

また、正解がない時代では、計画通りに事が進むことは稀で、やっては修正、やっては修正の試行錯誤が求められ、ここにもエンゲージメントが求められる理由があります。

エンゲージメントは、経営力の根幹を成す重要要件と言えるでしょう。

それにしても、なぜ、これほどまでに日本人のエンゲージメントは低いのでしょうか。
「そもそも、日本人はこういう調査に対し、控えめに答える」という指摘がありますが、同じような感覚を持つ韓国が12%あることを見ると、日本特有の原因があると考えられます。

原因は1つではなく、複数の要因が折り重なっていると指摘されていますが、その中でもインパクトが大きな要因は「参画不足」と考えて間違いないと思います。

日本人は「上の者がしっかりしてくれなければ」という依存心が強いと言います。これが「決めるのは上の者」「実行は下の者」という構造をつくり、意思決定への参画を妨げます。

参画がエンゲージメントを高めることは、講師業をやっていると嫌と言うほど分かります。
僕の研修に参加したことがある方なら分かると思いますが、およそ10分に1回の割合でグループ対話や体験ゲームなど、参画する機会が設けられています。

講師の話を聞いているだけだと苦痛ですが、自分で考え意見やアイデアを考え、喋ると愉しくなるし学習効果も高まります。
「楽しくて夢中で受講していたら、あっという間に終了時間になっていた」という感想は、エンゲージメントの高さを示しています。

このことは日常の仕事にも当てはまります。

仕事には次の7つの意思決定があります。

「何をやるか」「なぜやるか」「どんな出来栄えでやるか」「どの様にやるか」「誰が(誰と)やるか」「いつまでにやるか」「いくらでやるか(予算)」

これらの意思決定に参画し、考え喋った分だけ、物事を自分事にしエンゲージメントは高まります。
もちろん、7つ全部に社員が参画している企業は珍しいと思いますが、少なくとも、予算以外の6つの要件に、何らかの関わりを持つことが大切です。

特に「なぜやるか」…目的を突き詰めることは非常に重要です。
先日、ある障がい者の就労支援センターで研修を行いました。社員さんのエンゲージメントが非常に高く「研修をやる必要はないんじゃないか?」と思ったほどですが、その背景には「笑顔の創造」という事業目的が、頭での理解ではなく共感レベルで共有されていることにあります。

この事業目的だけを聞けば、他所と変わらない、ありふれた理念に聞こえるかもしれませんが、この文言に至るまでに、社員さんが十分に参画していることで、言葉の意味を超え、心の奥底で理解されているのです。
ちなみに、指示ゼロ経営が提唱する「プロジェクト”セルフ”マネジメント」は、先ほどの7つの要件の、予算以外の6つに社員さんが参画し、プロジェクトの立案と実行を主体的に行います。
その方法に関しては、また別の機会に記事にしたいと思います。

さて、7つの要件に対し十分な参画ができている企業はどのくらいあるでしょうか。
「どの様にやるか」…やり方だけを部下に任せている企業が多いのが実態だと思います。企業によっては、やり方にも細かく介入しているところもあります。

一方的に聞くだけのセミナーが苦痛なように、これではエンゲージメントが高まるはずはありません。

リーダーは「お口にチャック」でメンバーが喋る機会を増やすことが求められると思います。

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