「今」と「未来」の新しい相関関係

人間は、2つのことを同時に処理することができないと言われています。
例えば、下の絵は「アヒル」と「ウサギ」が描かれていますが、どちらかが見えている時は、もう一方を見ることはできません。

思考のテーブルに乗せることができるのは1つだけということです。

脳の特性は仕事をする上で不便を生じさせます。
というもの、仕事では「今」と「未来」、両方を考える必要があるからです。人間が良いパフォーマンスを発揮する時は、未来や過去、あるいは他者の評価などから解放され「今」に深く集中している状態、いわゆるフローに入っている時です。
しかし目標や目的など、未来を考えることも欠かせません。

未来を考えれば、今の集中が妨げられる。今に集中すると、未来がおろそかになる…いかんとしがたい不条理を抱えているのです。

このことはアスリートも同じです。僕の親友にバンクーバーパラリンピックのアイススレッジホッケーで銀メダルを獲った、馬島誠という男がいます。
世界の舞台で戦う彼は、フローの重要性も難しさも誰よりも知っています。
彼は、「試合中は勝つことを忘れ、今に集中することが大切だが、勝利を意識しないと厳しいトレーニングに耐えることはできない」と言います。

鳥とウサギを交互に扱わなければならないということです。

アスリートとビジネスパーソンの違いは、アスリートの世界は、トレーニングと本番(試合)の時間配分は9対1くらいなのに対し、ビジネスは0.5対9.5ほどということです。計画立案と、研修に費やす時間は少なく、毎日が本番ということです。

本番中に「結果を意識しろ」と言うリーダーがいますが、この行為がいかに部下のパフォーマンスを低下させるか分かりますよね。

では、どうすれば本番に没入できるのでしょうか。
解決のヒントは、サッカー日本代表の元監督、岡田武さんの言葉から得ることができると思います。
岡田さんは、試合の雲行きが怪しくなると「あれ?」と思うという話を聞いたことがあります。それは、勝利は決まっているが、そのシナリオが当初とは変わった時の、ちょっとした戸惑いを意味します。
しかし、戸惑いがあったとしても、未来は確定しているので動揺することなく、今に集中できるというわけです。

ビジネスにおいて確信を持つための有効な方法に「望みの統合」があります。
リーダーが叶えたいと思っている未来があり、それをメンバーも同じように望めば、自信を持つことができますし、実現の可能性は高まります。
顧客も望めば、自信は強固なものになります。さらに、社会全体が望むと思えれば、自信は確信に変わるでしょう。

多くの人が望むということは、そこに「他者が喜ぶこと」…利他性があるということです。
企業において、利他性を検証したものは経営理念であり、改めて、その重要性を感じるのです。

最後に、フローは、パフォーマンスの面ばかりが注目されていますが、フロー状態にいる時に幸福感が高まるという事実も忘れてはいけないと思います。
未来を制すると同時に、人生をも制するのかもしれませんね。


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