離職を減らしたければ「大嫌いだけど大好き」と言われる企業を目指す
日本商工会議所の調査によると、中小企業の人手不足対策として、次のような取り組みを行っている企業が多いようです。
1、賃上げの実施、募集賃金の引き上げ
2、福利厚生の充実
3、人材育成・研修制度の充実
4、オフィス・工場など、職場の環境整備
5、ワークライフバランスの推進
6、多様で、柔軟な時間設定による働き方の推進(フレックス制、時短勤務など)
7、副業・兼業の許可
8、場所にとらわれない、柔軟な働き方の推進
1→8の順に、取り組む企業が多いという並びになっています。
僕の知る企業を見ても、この結果は妥当だと感じていますが、効果に関しては企業によりバラツキがあるようです。
賃上げにより離職が減った企業もあれば、まったく変わらない企業もあります。
福利厚生の充実により満足度が向上した企業もあれば、そうでない企業もある。
その差はどこにあるのでしょうか。
このことは、臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」で整理することができます。
この理論は、その名の通り、2つの要因から働く人の満足を考察しています。
1、衛生要因
具体例:賃金や福利厚生、職場環境など。
特徴:不満足を防止できるが、満足度を高めることにはつながらない。
2、動機付け要因
具体例:承認、仕事を任せられていること、仕事そのものが愉しい、達成感など。
特徴:満足度を高めるが、不満足を解消することはできない。
特徴を見ると、この2つは別物であることが分かります。
「不満を解消しても満足にはならないし、満足度を高めても不満が消えるわけではない」ということです。
人間関係の「大好きだけど、大嫌いな部分もある」「嫌なヤツだけど、なぜか好き」という感情と同じですね。
先述した、中小企業の8つの取り組みはほとんどが衛生要因です。不満足を解消するだけで、満足や愛着が高まるわけではないということです。
そんな中にあり、同じような取り組みをしているのに、社員の満足度を高め、定着を高めている企業があります。
それらの企業には「不満もあるが、満足が大きい」という特徴があり、満足を高めている要因に、「主体的な関与」があります。
例えば、僕が審査委員を務める「ホワイト企業大賞」を受賞したあるベンチャー企業がそうでした。
この会社では、福利厚生を社員が作っています。社員さんは、福利厚生そのものよりも、「福利厚生を自分たちでつくる愉しさ」に価値を見出し、非常にイキイキとしていました。
同社は目下、成長期にあり、決して仕事は楽ではありませんが、離職率は1%未満をキープしています。
研修制度も同様です。
リクルートマネジメントソリューションズの調査「働く人の本音調査」によると、魅力的な人材開発策に対し「自分で研修を選べる」と回答した人が最多でした。
一方的に与えられるよりも、関与した方が満足度は高まります。
魅力的な企業になるためには、マイナスがない企業ではなく「大嫌いだけど大好き」と言われる企業を目指した方が良いと思います。
取り組みは、目の前の小さなことから始めることができます。
お茶菓子代を増やすよりも、限られた予算内で、自分たちで購入できた方が満足度は高まるということです。
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