すぐに「ハイ!」と答える日本人の自発性の育て方
退任した日本バレーボールのフィリップ・ブラン監督が、昨年秋にメディアのインタビューで、日本人選手について次のように述べていました。
「日本人は『ハイ』と答えるのは得意だが、その実、私が伝えたことをまったく理解もしていないし、納得もしていない」
これは、多くのリーダーが実感していることではないでしょうか。
社長が社員に「自発的になりなさい!」と指示を出して、社員が「ハイ!」と声を揃えて返事をしたという笑い話がありますが、僕は実際にこの目で見たことがあります。
中には、かの国家の独裁者の言うことを、取り巻きがメモをするように、一心不乱にメモっている人もいました。
自発性は、本人の意識の問題とされがちですが、多分に環境や文脈に影響されるものです。
ある環境・状況に置かれた時に「思わず」(うっかり)発動するということです。
これは自発性だけでなく、協調性や創造性といった要件も同じです。
人は、毎日のように「うっかり」に陥っています。
「魔が差す」という現象がその1つで、自分の意志でやったと言えるような言えないような、主体がよく分からない現象です。心の中に入り込んだ「魔」に突き動かされるわけで、だからこそ裁判では「魔」の正体を明らかにし情状酌量を行うわけです。
「恋に落ちる」もそうで、自分が能動的に落ちたと言えるような言えないような、かと言って、相手に落とされたか?というと、そう言えるような言えないような現象です。
こうした能動でも受動でもない様態を「中動態」と言います。
だから「自発的になりなさい」と、相手に自立を求めても効果は限定的というわけです。
自発性や協調性や創造性といったものが環境・文脈に依存するものだとして、では誰がその環境をつくるのでしょうか?
それは「全員」だと思います。
「思わずそうなってしまう」環境をつくる立役者は全員だと思うのです。
環境とは、言い換えれば「風土」であり、風土は1人1人の言動の積み重ねで醸成されます。あなたの会社の風土は、良いものも悪いものも、みんなでコツコツとつくり上げたものです。
良い風土をつくる言動とは「他を慮る」言動です。他者のことを慮り、自分を律しながら意思決定できることを「自律」と言います。
個で完結する「自立」との違いは他者との関係性の有無です。
僕が尊敬する、谷川クリーニングの谷川祐一社長は「良好な人間関係の立役者は1人1人」と言います。
採用の面接時に「私は小さな子どもがいるんですが、子どもの学校行事の時には休めますか?」と聞かれるそうです。その時に、社長は「それは私には分かりません。あなたが、日頃、仲間に貢献していれば、そんな時に仲間は『いいよ、休みなよ』と支援してくれるでしょう」と答えるそうです。
これは、一見「自立」を求めているように見えますが、本質は「自律」を促していると言えます。
自立を求める場合、「休むかどうかは自分で決めて」となります。
そうではなく「互恵の風土をつくってください」と自律を求めているのだと。
その積み重ねで「思わず人間関係がよくなる」環境づくりが醸成されているのだと思います。
環境・文脈をつくるのは「1人1人」全員。
今日の記事は、是非、社員さんと共有していただき、みんなが良い「うっかり」を起こすような風土をつくってください。
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