心の豊かさの時代を生き抜く「想定外を起こす経営」について

今、元気がいい中小企業の特徴を挙げると「想定外を起こす」というキーワードが浮かびます。
僕の親友に、新潟県の五泉市で、小さなスーパーマーケットを営む、鈴木さんという方がいます。

同店では生活必需店も扱いますが、店主セレクトの商品が豊富に取り揃えてあり、お客様は、店内を回遊しているうちに、気づくと買い物カゴがいっぱいになると言います。

レジで精算を済ませた時のお客様の言葉に、同店の商いの真髄を垣間見ることができます。

「また買っちゃったよ」

嬉しそうな表情でそう言うお客様がたくさんいるのです。

想定を超える消費を「思わず」してしまったということですが、お客様は、店に入る時には買うと思っていなかったものを買ったわけですから、お店に教育されたということになります。

このお客様が、他の消費を減らさなかった場合、世の中のお金の循環が良くなります。
こういう商人が増えれば、需要の拡大が起き、貨幣の流通総量が増える可能性だってあります。

このような消費は、コモディティ化した商品・サービスでは起きません。
(コモディティとは、どの会社の製品やサービスも似たり寄ったりという意味で、万人にとって便利な商品・サービスに多い。)

抜群に便利であっても、需要の拡大が起きないものもあります。
例えば、高速道路のETCや駅の自動改札機がそうです。これらは非常に便利なものですが、普及しても利用者が特別に増えるわけではありません。

インターネットも同様です。
これだけ私たちの生活を激変させたインターネットをもってしても、世界のGDP伸び率の鈍化は緩和されていません。新たな消費をまったく喚起していないわけではありませんが、インターネットを上手に活用した人が既存の市場のシェアを奪ったというのが実態です。

よく「モノの豊かさから心の豊かさへ」と言われます。
それぞれの特徴を考察すると、前者は「どれかが増えるとどれかが減る」というゼロサムゲームであるの対し、後者は、全体の富が増えるプラスサムゲームなのです。

前者は、モノの過剰と人口減少により、今後、ますます競争が激化するでしょう。

僕が、中小企業は後者を目指そうと言うのは、このような理由からです。

心の豊かさの商いには正解がありませんし、その形は無数にあります。
スーパーマーケットの鈴木さんを見ると、このことが分かります。鈴木さんは「何を仕入れれば良いだろう?」という、正解探しはしません。正解探しはコモディティの世界の戦い方です。

鈴木さんは、旅行などで美味しいものに出会った時に「これは、何としてもウチのお客さんに紹介したい」という衝動が起き、衝動のおもむくままに行動するのです。

プリンのかぶりものをしているのが鈴木さんです。

同店の顧客は、鈴木さんのこうした仕事ぶりを知っているので、鈴木さんが紹介するものが欲しくなり「思わず」買ってしまうというわけです。

競合に怯えることもない。
顧客から値引き要求されることもない。
経済発展にも貢献する。
自己重要感も高まる。
社員も仕事が愉しくなる。

こうしたことが綺麗事ではなく実際に起きているのですから、中小企業の無限の可能性を感じ、ワクワクしてしまうのです。

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