組織の心理的安全性を高める「気分の見える化」という功労者

私たちは子どもの頃から「相手の立場にたって物事を考える」「相手の気持ちを考える」と躾けられてきました。
その躾けが失敗だったのか、時代から優しさが失われたのか、それができる人は少ないのが現実だと思います。
「ごく一部の人」を除いて。

その人は、きっとあなたのチームにもいて、組織に大きく貢献していると思います。しかし、もしかすると「デキる人」とは認識されていないかもしれません。

集団が健全に活動するためには14の役割が必要で、指示ゼロ経営では「創発カード」というアイテムでキャラクター化しています。

14の役割は大きく「パフォーマンス」と「メンテナンス」に分かれます。パフォーマンスとは、文字通り、組織が良い成果を出すための直接的な要件を指します。メンテナンスは、組織が民主的で安心な場であり続けるために必要な要件を指します。
前者は「強さ」を、後者は「優しさ」を司ると解釈しても良いと思います。

メンテンス機能の中の「気分の見える化」と名付けているのが、「ごく一部の人」ということになります。相手の気持ちを察する力、もしくは集団内に漂う気分を察し、「言語化する力」に長けているのです。

例えば、クレーム対応などの重い会議で、沈黙に陥った時などに、「自分が責められないか怖くなって押し黙っちゃうよね」というように、みんなの気分を代弁するのです。
人は自分の感情を押し殺すと心が固くなります。「気分の見える化」により、自分の感情に触れることができると心が軽くなるのです。

その他にも「メンバーが寛容になる」という効果も期待できます。
ある企業の事例を紹介しますね。
その会社では、1人の社員(Aさん)が派閥をつくり、派閥内に誰かの悪口を流布するという問題を抱えており、社長は非常に悩んでいました。この手の問題に対し、普通は本人に注意を与え、改善されない場合は罰則を与えることを考えますよね。

ところが、その会社では事務員さんの「気分の見える化」の能力により、意外な解決を迎えたのです。
事務員さんはAさんの気持ちを察した結果、「Aさんは、”仲間を作らないと自分が仲間外れにされるかも?”という恐れを感じているのではないか?」という仮説を立てました。
もしかしたら、過去にイジメが横行するクラスにいた経験があるのかもしれません。事務員がその仮説を社長に伝えたところ、「そうかもしれないな」と理解を示したと言います。
きっと、社長自身の過去の経験・体験の中に思い当たる節があったのでしょう。

「そうならざるを得ない事情があるのではないか?」と察することができると、人は他者に寛容になれることがあります。
社長は、Aさんに対し、以前よりも共感をもって接することができるようになりました。それに伴い、Aさんは味方がいることに安心したのか、ずいぶんと穏やかになったと言います。

事務員さんの仮説が正しかったのかは分かりませんが、「相手の気持ちになってみる」ことで関係性が変わることがあるということです。

「気分の見える化」は、成果に直結する役割ではないため過小評価される傾向があります。

しかし、組織の屋台骨とも言うべき重要な役割を担ってくれているのです。

今日の記事をチーム内で共有し、功労者にスポットを当て、改めて感謝の気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。


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