私たちは、「結果」に過ぎないものを「目的」にしてしまう

人生も経営も、欲しい物を直接手に入れようとすると、かえって遠ざかってしまうことがあります。
重要なものほど遠ざかるようにできていると思います。

例えば、「ゾーン」なんて、その最たるものだと思います。
以前に、プロゴルファーの石川遼選手が、勝利インタビューで「きっと僕は、プレー中、ずっとゾーンに入っていたのだと思います」と言っていました。
試合が終わった時に、「気づけばゾーンに入っていた」ということです。

入ろうと思うと入れないのがゾーンです。

僕は、「ダウン症の書家」として有名な金澤翔子さんの書が好きで、オフィスに、一文字「道」と書かれた書を飾っています。

10年ほど前に個展に行った際に、運よく、金澤さんのパフォーマンスを観る機会に恵まれました。
金澤さんは、巨大な紙を前にして大きな筆を抱え、緊張した面持ちで深呼吸をしていました。

集中力を高め、一気に書き始めます。
まさに、「忘我」の境地です。
会場全体が、時間が止まったかのような不思議な感覚に包まれました。
「共に生きる」の躍動する文字に、凄まじい生命力が宿っていて、僕は圧倒されました。

それから何日間も、僕は、「どうすれば、あの様な創造性を身につけることができるのだろうか?」と考え続けました。
考え抜いた結果、「どうすれば、身に付けられるか?」と考えているうちは、到底、発現できないのが創造性というものではないか?と思ったのです。
金澤さんは、創造的になろうとなんてしておらず、全身全霊で書に向き合った「結果」として、僕を圧倒した創造性が発揮されていたのだと。

僕は、結果に過ぎないものを目的にしていたのです。

感謝の気持ちも同じだと思います。
感謝しようと思って、できるものではなく、ある精神状態で生きている「結果」として生まれる感情なのだと思います。

創造性や感性は、今の時代の経営にとって、非常に重要なファクターだと思います。
大量生産・大量消費の時代を経て、生活者は一通りのモノを手にしました。それでも欲望がなくなるわけではなく、より高度なものを求めます。
今では、スペックの優劣ではない、「おもてなし」に代表されるような価値を求めるようになりました。

創造性や感性といった重要なファクターを手に入れるという「目的」を持つと遠ざかるのだから、ややこしいですよね。

金澤さんが創作活動に没入している時のような、全身全霊で自己表現をしていた「結果」として創造性が発動していたという世界をつくるしかないと思います。

これは経営手法の改善で成し得ることではありません。
風土の問題です。

これからの時代、企業のあり方が根本から変わると僕は考えています。
手に入れたい目的、ゴールから逆算するという発想が通用しないケースが増えると思います。
仕事の行為自体が愉しくてしょうがないという世界の中で、没入した「結果」として、私たちが欲しいものが出現するという因果で経営する時代になると思うのです。

私たちは、「結果」に過ぎないものを「目的」にしてしまう傾向があります。

本当にややこしいですね…

というわけで、仕事に没入していきましょう。
経営者の方は、社員さんが没入できる環境を整えましょう。

それでは今日も愉しく素敵な1日をお過ごしください!

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