リーダーの、その向上心が人と組織の成長を阻害する

人と組織の成長に向上心は欠かせませんが、向上心の持ち方を間違えると衰退を招くことがあります。

間違いとは「足りないものに意識が偏ること」
そもそも向上心とは現状と理想のギャップを埋めようという意欲から生まれるので、どうしても足りないものを観ることになります。

これが繁栄を阻害します。
今日の記事ではその2つの典型を考えますね。

既存客ではなく新規客に意識が偏る

僕は企業研修や公開セミナーを生業としています。
公開セミナーには定員があります。
すると僕は毎回、こんな心境に陥ります。

「ああ、セミナーまであと1ヶ月。10名の定員に対し2名足りない」

こんな心境になった時に、自分への戒めとして道場六三郎さんの逸話を思い出すのです。

ある日、道場さんが経営コンサルタントと食事に行きましたが、その店は繁盛していなく1組しかお客様がいなかったそうです。
道場さんはコンサルに「君ならどうする?」と聞きました。
コンサルタントは頭をフル回転させ、どうすれば空席がなくなるか…増客のアイデアを出しました。
それに対し、道場さんはこう言ったそうです。
「空席を見てはいけない。僕なら、来てくれているあの1組のお客様にうんと喜んでいただけるように尽くすよ。家に帰った時に『今日、すごく良いレストランに行ったんだ。今度、みんなで行こう』と言ってもらえるように」

営業が主体の業種、例えば新聞販売店などは気をつけないと、いとも簡単にこの状態に陥ります。
いつも「足りないもの」に目が行き、向上心を燃やし頑張るほどに独りよがりの活動が増え、お客様の信頼を失うことになるのです。

リーダーが部下の足りない部分ばかり見る

次は社内のことです。
リーダーに向上心が強すぎると部下の足りない部分に目が行ってしまいます。
するとリーダーには「まだまだ」という言葉が増えます。

この言葉を浴び続けると人は自信を失い、「自分はダメなんだ」という観念が強化されてしまいます。
さらに上司と良い人間関係をつくることができなくなります。

だから僕は「成長した部分」を見ることから始めるのをお勧めするのです。
これは想像以上の効果があります。

人は意識しないと自分の成長を実感できないものです。
自分がやったことって当たり前と思っちゃうでしょ。
まずはそれを確認します。
チーム単位で課題を持ち活動する場合、チームの成長を確認します。

「3ヶ月前にはできなかった事で、今、出来るようになったことは?」
「この3ヶ月間、成長できたと思うことは?」

その上で未来を描くことが大切だと考えるのです。
その方が成長した未来がイメージできるからです。

よく学校の体育館などに「過去に感謝、現在に信頼、未来に希望」という、ドイツ人哲学者 オットー・ボルノーの金言が張り出してありますが、まさにこの教訓なのだと思います。

さて、このように間違った視点…「足りない部分ばかりに目が行く」が人と組織の成長を妨げます。

向上心は、まずは「過去に感謝」することに立脚して発揮することが大切です。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。

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