自分と相手の感情を理解すると人材育成はこんなにも上手くいく
よく「正直は最強の戦略」と言いいますが、人と組織を育てる上で、特に重要な考え方だと思っています。
本心を隠しておいて、上手な言葉を並べ立てても相手の心には響かず、真の信頼関係は築けないと思います。
互いの肚の中が見えないと、人は恐れから疑心暗鬼になってしまいます。
今日の記事では僕が経験した、本当に気持ちを伝えて上手くいった事例から学びたいと思います。
相手の気持ちを汲み取った時に心の距離が縮まった
僕が社長に就任したのは1995年の夏、24歳の時でした。
父が急逝し、ある日、急に社長になったのだから何事も上手くいくはずがありません。
特に、人に関する悩みは絶えなかった。
社員は父が育てた、僕よりも30歳以上年上の人たちばかりです。
彼らからすれば「ボンボンが帰ってきたけど大丈夫か?」と心配だったと思います。
当時、当社には3つの課題がありました。
1、業界が衰退期に入り、新しい手を打たなければならない状況
2、地域からの評判が悪く「町の三悪堂」と言われていた(◯◯堂という3つの企業が町を悪くしているという意味)
3、人材が育っていない(毎日、新聞を配ることが主業務だった)
そして、僕にとって最大の悩みは、一番影響力がある番頭さんが僕のやり方に反対していたことです。
新しい分野に進むには組織が1つになる必要がある…でも、その鍵を握る人が抵抗勢力になっていたのです。
八方塞がりの中、師匠に相談をしました。
師匠は「自分で考えなさい。でも、1つだけ。その番頭さんの気持ち、感情をよく考えなさい」と言いました。
僕は番頭さんの気持ちを考え抜いた末に、何となくですが気持ちが分かってきました。
新しい社長が来て新しいことを始めようとしているわけです。
それは良くも悪くも、過去を否定することになります。
しかし、今、会社があるのは先代と社員さんがやってきた事が正しかったからです。
僕はそれに感謝もせずに新たなことを始めようとしたのです。
また、彼は、「もしかしたら自分はお払い箱かも。厄介者と思われているかも」という恐れもあったと思います。
そんな気持ちを汲み取った時に、僕は、彼との心の距離が縮まったような気がしたのです。
相手の気持、感情を理解すること。自分の本当の気持を理解すること。正直に伝えること。
同時に、僕は自分の感情を理解することに努めました。
当時の僕が感じていたこと、それは…
・衰退期で舵取りをしなければならない重圧
・三悪堂と呼ばれていることへの嫌悪
・故に、スタッフのモチベーションが低い
・正直、番頭さんには退職してほしいと思っていた
さて、この中で番頭さんに退職をしてほしいという気持ちですが、どうもモヤモヤするのです。
「本当にそう思っているのか?」と。
考え抜いた結果、そうじゃない事が分かりました。
僕は、番頭さんに味方になって欲しかったのです。
でも、なってくれない。
だから退職して欲しいと思っていたのです。
本当の気持ちは「味方になって欲しい」だったのです。
僕は、番頭さんを飲みに誘い、僕の気持ちを正直に全部伝えました。
子どものころから三悪堂の息子と言われ辛かったこと。スタッフも同じ気持ちでいる事が悔しいこと。大きな重圧を抱えていること。
そして…
「◯◯さん、あなたに味方になって欲しい」と。
番頭さんは無口な方なので何も言いませんでした。
しかし、その日の飲み代を「今日は俺が出すから」とおごってくれたのです。
そして、数日後、作業中に大きな声でみんなに「おい、新しい社長が新しいことを始めるって言ってんだから指示に従えよ」と言ったのです。
「ええ〜、そこは『自発的に動けよ』でしょ?」とツッコみたくなりましたが、僕は涙が出るほど嬉しかったのです。
相手の気持、感情を理解すること。
自分の本当の気持を理解すること。
そして、正直に伝えること。
人材育成の礎だと思うのです。
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