部下を大切にしてきたリーダーが、部下の心を破壊する時
手塩にかけると言いますが、天塩にかけたはずの部下が期待よりも育たないという経験はないでしょうか?
そればかりか、期待に応えてくれなかったという残念から、人間関係がギクシャクすることもあります。
なぜ手塩にかけたのに育たないのか?
期待する部下ががちゃんと育つには何が必要なのか?
今日の記事ではそんな事を考えたいと思います。
なぜ手塩にかけたのに育たないのか?
まずはこの事例を紹介します。
5年ほど前に、長野市で夢新聞ワークをやりました。
夢新聞とは、自分の夢が叶った未来の新聞を作るワークショップです。
未来の日付を入れ、文章は「◯◯を達成」という風に完了形で書きます。
そこに、ある小学5年生の男の子が大人に混じって参加していました。
最初に自己紹介の時間を取りましたが、その子にマイクが渡っても一向に喋らないのです。
最初の一声を聞いた時に理由が分かりました。
実は、彼には吃音の障がいがあり上手に話せないのです。
彼は振り絞るように言いました。
「僕には吃音の他にも発達障がいがあり、今日、皆さんにご迷惑をおかけするかもしれませんがよろしくお願いします。」
自らの自己開示をしたのです。
ワークの最後には、参加者が自分の夢を発表します。
彼はどもりながらも堂々とこう発表しました。
「長野県の教育長になった」
僕は、すかさずその理由を聞きました。
理由を要約するとこう。
教育長になったら障がいのある子もない子も一緒に学べる教室を作りたい。
今、彼は特別支援学級にいて、文字通り「特別に」支援してもらっていますが、社会に出たら特別に支援してくれる人はいなくなります。
だから積極的に誰かに助けを求める力が必要で、それは一緒に学ぶことで培われると考えているのです。
だから自己紹介で「よろしくお願いします」と言えたのです。
また、そんな教室を作ることが健常者にとっても社会にとっても良いと考えているのです。
手を離し、可愛い子には旅をさせることが大切
彼の事例から学べることは、特別に支援するから自らの意思で動けなくなるということです。
これが、企業で起きる「手塩にかけたのに育たなかった」という現象の正体だと考えています。
さて、ここまでは単に「育たなかった」というだけで済むのですが、この先に悲劇が待っています。
上司は、自分が手塩にかけ過ぎたことが原因、つまり自分で立つことの機会を奪ったのにも関わらず、部下のせいにしてしまうことがあります。
「期待を裏切られた」という思いが怒りに変わる。
「何でこんなにも親切に教えたのに、できないの?」と。
(親切すぎるから出来なくなる…)
「何度言えば分かるんだ」と。
(喋った人が賢くなるので、本来なら部下に喋らせるべき…)
部下からすればショックです。
あれほど親密に関わってくれた上司からこんな事を言われたら悲しいです。
これは、記事タイトルの「部下を大切にしてきたリーダーが、部下の心を破壊する時」ということです。
さて、話は変わりますが、上司が天塩にかけるのは、本当は部下のためを思ってのことではないかもしれないと、最近、思うようになりました。
手塩にかけることで自分の支配下に置きたいというエゴによるものなのかもしれません。
特に、自立心がない部下を手塩に変えようとした場合には、相手が自分に依存する事が分かるのでこの可能性があると考えるのです。
なるべくしてなった、そんな人間関係なのだと思います。
子育て四訓という教育界の金言があります。
1、乳児はしっかり肌を離すな
2、幼児は肌を離せ、手を離すな
3、少年は手を離せ、眼を離すな
4、青年は眼を離せ、心を離すな
離れていき、可愛い子には旅をさせることが大切なのだと思います。
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。