無意識のうちに引いている「私とあなた」を分ける線を消そう

僕は、これからの経営は「売り手と買い手」の境界線をなくすことだと思っています。
社内では「労使」の境界線をなくすことだと。

コミュニティ化するということ。
言い換えれば、望みを同じくした仲間、同志という関係になることです。

これが出来ると、とても多くの良いことが起きると思うのです。
しかし、意識の中にある「線」を消すのは難しい、でも線を書いている自分を自覚し、意識的に変えれば出来るようになると思います。

「こんな奴隷のような仕事はしたくない」と言ったスタッフさん

僕が、自分の中にある線の存在に気付いた、ある出来事があります。
僕が経営してきた会社は新聞店です。
新聞店の中には配った新聞をお客様の自宅に伺い回収するサービスをしているところがあります。
高齢化が進む中で、とても良いサービスだと思います。

僕が古紙回収を始めたのは今から20年ほど前です。
まずは、既にやっている会社を見学させてもらいました。

愕然とした。

何と、古紙に生ゴミを挟んで出すマナーの悪いお客様がいるのです。
現場のスタッフさんはこう言いました。

「サービスを始めた頃は、とても有難がられた。でも慣れると『お宅から新聞を取っているのだから回収は当然』と言い出す人が出た」

そして言いました。
「こんな奴隷のような仕事はしたくない」

スタッフさんの言葉を聞いて、僕の気持ちは揺らぎました。
そして、やるなら、こんな風にならないように工夫が必要だと思ったのです。

スタッフと一緒に考えた末に、ナイスアイデアが生まれました。
それは、お客様から集めた古紙をリサイクルに出し現金に変え貯めていきます。
そして、ある程度の額(30万円くらい)になったら、地域の人と一緒に、地域に役立つイベントなどを開催しようと。

つまり「サービスを提供する側、受ける側」という構図…線を取っ払って仲間になったのです。
お客様はとても丁寧に古紙を提供してくれています。

自社とお客様、双方が望む理想を持つこと

既に、お客様とこうした関係性をつくっている企業の話を聞くと、とても商売が有利になることが分かりました。

商売のコストで非常に大きいのは新規顧客の獲得コストです。
例えば、100万円の広告費を使って200人の顧客と出会うことができたとします。
この場合、100万円÷200人=5000円…つまり、1人の顧客と出会うのに5000円かかったわけです。
その出会った全てのお客様が、その後、5000円以上の利益をもたらしてくれたら商売は成り立ちます。
ぜも、現実は多くのお客様が流出します。

お客様との関係性が同志となれば、お客様がお客様を呼んでくれるので、このコストは大幅に減ることになります。

また、商売には「囲い込み」という不思議な言葉があります。
囲い込まないと逃げてしまうから、あの手この手で繋ぎ止めるわけですが、コミュニティにいたいからいるとなれば、そのコストも減ります。

削減したお金を既存客のために使うことが出来るのでコミュニティはより豊かになり、繁栄の好循環に入ります。

こうした構図を創るためには、自社とお客様、双方が望む理想を持つことだと思います。
新聞店の例で言えば、「地域の発展」です。

しかも、取ってつけたような形だけの理想では、すぐに見透かされてしまうと思います。
「本当に思っていること、願っていること」

形から入るのも良いと思いますが、「どうしたいのか?」「何を望むのか?」これをよく考えることが大切だと思います。

こうして考えると、近江商人の三方良しの思想は本当に素晴らしいですよね?

□売り手が「線」を書くとお客様も書く
□線は、意識の中で書いている
□線を消し、仲間・同志になる
□双方が望む願いを共有する

これから、境界線のない企業が増えてくると思っています。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。

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