人材が入れ替わっても高度なサービスが維持される経営を目指す
企業の競争力は人材が鍵を握る
「人に依存しない経営」という事が言われ出したのは、恐らくバブル経済崩壊後だったと思います。
リストラが盛んに行わ人材の流動化が進んだ結果、社員の能力に依存せず仕組みでカバーするという考え方です。
これは「基本業務をしっかりと回す」という意味では効果があると思います。
しかし、それ以上の事…創造的な領域には弱いと考えています。
例えば、おもてなしが代表例です。
その場、その相手、状況に応じてサービスを即興で開発するのだから、人材に頼るしかありません。
僕にはそんな経験があります。
僕が経営してきた会社に50代の事務員さん(女性)がいます。
30代の頃にパートとして入社、新聞代金の集金からスタートして事務員になり、今では正社員として大活躍しています。
彼女、地域に非常に多くのファンを持っています。
どのくらいのレベルかというと、息子さんのバレーの試合、中体連の試合にファンが応援に来てくれるほどです。
なぜ、そんなにファンが多いかというと、彼女は20年間、新聞店で発行しているニューズレター(手づくり新聞)の1ページを書いているのです。
内容は極めてプライベートな事です。
僕が「来月から書いて」と無茶振りしてスタートしたのですが、正直に言うと僕はそんなに期待はしていませんでした。
「何でも良い、気楽に書いてくれれば良い、」そう伝えました。
彼女は、本当に自由に書いてくれました。
内容のほとんどがプライベートの事です。
子育てのこと、お子さんの部活のこと、料理のこと…
それを読んでくれるお客様がファンになって、ついに息子さんの試合の応援に来てくれるほどになりました。
彼女の存在そのものが新聞店の競争力になっています。
社員同士の学び合いで高度な経営を維持する
人材に頼る経営には反対論を唱える人もいます。
その多くは「人材に依存すると辞められた時に顧客離れを起こす」「サービスなどで一定の水準が保てなくなる」というものです。
中には、「社員がつけ上がる」と言う人もいます。
でも、僕の経験で言えばそんな事にはならないと考えています。
ただし、条件付きで。
まず、自分のやり方でサービスを創造できる職場はやり甲斐を得られますので離職率が下がります。
時に、つけ上がる社員が出るかもしれませんが、リーダーが気に入らないだけで大した問題ではないと思います。
サービスの水準が保てなくなることも防げます。
その理由は、こうした、ある意味「芸」を磨く人材育成は学び合いで成り立つからです。
よく、クレドカードを作り、その内容に沿った行動をした社員の実践を皆んなで共有する会社があります。
ホスピタリティ向上の最も有効な方法だと思いますが、これが僕が言う学び合いです。
じわじわと芸が文化になっていきます。
これは伝統ある学校に似ていると思います。
創立の理念が連綿と受け継がれて行くわけですが、創始者も校長も教員も生徒も、数年に1回入れ替わるにも関わらず文化は受け継がれていく。
凄いことだと思いますが、日頃から「自校らしさとは?」を考えている学校で文化の承継が行われます。
学び合う仕組みがあると、人材が育つ効果もありますが、文化を醸成する効果もあります。
だから、入れ替わっても素晴らしいサービスが維持されます。
最低水準のサービスを維持するにはシステムが有効。
同時に、創造性や個性の力が学び合いで根付く経営…今は人間重視の経営が求められる、そう考えています。
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。