人材育成の達人は、普通の人にはない「ある願い」を持っている
本当に社員のことを思えば、自ずと長期的視点での育成になる
社員を研修に派遣する時に、リーダーは何を期待するでしょうか?
「研修で学んだことを仕事に活かしてほしい」
「儲かる会社にしたい」
そんな事を期待するはずだと思います。
ところが、人材育成の達人はもう1つ、別の願いを持っていると思います。
それは、「本人に豊かな人生を歩んで欲しい」という願いです。
クサイ表現をすれば「愛がある」ということ。
これを心から願うには相当な人間力が必要ですが、考えてみることならできますし、考えることが大切だと思います。
研修に参加する社員さんも「会社のために」と要求されるよりも「あなたのために」と言われる方が心が動くし主体的にもなれます。
達人の願いは、時間軸と空間的範囲が大きいのだと思います。
図にするとこんな感じね。
あなたはどの領域にいますでしょうか?
左下の領域は、短期の結果だけを求め、効果を会社だけに置いています。
ところが達人は右上の領域にいます。
長期かつ、会社だけでなく社員個人やその家族、地域などに思いが及んでいます。
僕もなかなか真似ができない、そう思います。
企業だけでなく学校にもそういう先生がいます。
今から3年前に、夢新聞でお邪魔したクラスの担任がそうでした。
夢新聞ではクラスにミッションを与えます。
「制限時間までにクラス全員が『1人残らず』夢新聞を完成させる」
講師も担任も何1つ教えません。
子どもたちだけの力でやってもらいます。
その意図は、指示待ちではなく、自発的に協働をする力を身に付けて欲しいからです。
それが、最も汎用性の高い「生きる力」だと考えるからです。
仮にミッションが達成できなくても、そこから学び次に活かすことが大切だと考えています。
しかし、講師も担任も「見守る」ことができません。
つい口を出したりお膳立てをしてしまいます。
親切といえば親切ですが、同時に、子どもたちから自ら課題解決をする学習機会を奪うことになります。
人材育成の目標は、自社が潰れても、他社から引く手あまたの社員を育てる
件の先生は、本当に何も教えずに見守るに徹していました。
子どもたちも先生を全くアテにしません。
そして見事にミッションを達成しました。
後で聞くと、普段から「自分たちで解決する」トレーニングをしているそうです。
その意図を聞いて僕は感動しました。
「私は、子どもたちに、この先、ずっと付いていくことができない。僕がいないと課題解決ができないようでは彼らは可哀想だ」
人は出会ったからには必ず別れる時がきます。
「その先」を考えて教育しているのです。
話を企業に戻します。
以前に、岩手県一関市にある京屋染物店の蜂谷悠介社長がこんな事を言っていました。
「僕は、人材育成の目標を、自社が潰れても、他社から引く手あまたの社員を育てることに置いている」
指示ゼロ経営の人材育成の目標と全く同じです。
時間軸、空間的範囲ともに大きな視点で育成しています。
空間的範囲が広いので、その中には会社も他の社員も、取引先などの利害関係者も含まれます。
会社のことは良いから、あなたの幸せを、という考え方ではありません。
統合されているのです。
こうすることで結果的に潰れない、長きに渡る繁栄を実現するのだと思います。
この領域に達するのは並大抵のことではありません。
心から思うには相当な人間力が要りますが、考えてみることなら誰でもできます。
そして、考えた人だけがその領域の住人になるパスポートを手にできるのだと。
想像力を働かせれば近づくことができる、僕はそう信じています。
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